リッツ・カールトンのUX
Posted in IA / UX / HCD / UI on 5月 17th, 2009 by chibirashka – 2 Commentsリッツ・カールトンといえば、最高のサービスを提供するホテルと認知され、「ホスピタリティ」や「すばらしいエクスペリエンス」といった言葉を想起するブランドの1つなのではないかと思う。
そのサービス精神や企業風土については、さまざまな本も出ているし、あちこちで語られているので、リッツ・カールトン従業員全ての行動の源泉となっている「クレド」については、知っている人の方が多いだろう。
私ももちろん、言葉やその大体の内容については知っていたけれど、どうせリッツに行くなら、実際に見てみたいw
というわけで、WOW Burgerを食べるついでに、おばちゃん根性丸出しでUXや最高のサービスデザインの調査のため、「クレド」を見せていただくことに。
Burgerを持って来てくれたウェイトレスの方(っていう呼び方でいいの?)にお願いすると「クレドのこと、よくご存知ですね」と言いながら、さっとポケットから取り出して、手渡してくれた。クレドについてはよく聞かれるだろうし、私みたいな客への対応は日常茶飯事だろうに、嫌な顔一つせずに気持ちよく対応してくれるところに、イチイチ感心。
クレドを見ていたら、「もし良かったら、新しいものを1部お持ちしましょうか。差し上げますよ。」といってくれたので、「ぜひ!」とお願いすることに。
クレドを持って来てくれたのは、さっきのウェイトレスの女性ではなく別の男性。これまた、テーブルに来てくれたタイミングが絶妙で、ちゃんと食事が済んでゆったりしているところを見計らってくれている(と思われる)。
新品のクレドは折り目のない1枚の長い紙。「クレドには折り方があるんです」といって、その男性が折り方を見せてくれる。といっても、表紙がちゃんと見えるようになっていれば、どう折るかは個々に任されているよう。
いただいたクレドを見てみると、
- 表紙(クレド)
- サービス・バリューズ
- サービスの3ステップ
- モットー
- 従業員への約束
で構成されていた。
サービス・バリュー部分は12の項目が載っているんだけど、クレドを持って来てくれた男性が、「こちらは差し上げるわけにはいかないのですが・・」と言いながら胸ポケットから出した別のクレドには20の項目があり、「リッツ・カールトンのサービスは時代にあわせて変わっていくので、クレドもそれに伴って変わって行くのです。このクレドは、大阪時代にもらったクレドで、以前は20の項目がありました。」と説明してくれた。
項目を照らし合わせて比較するところまでは、なんとなく気が引けてしなかったんだけど、現状の評価に甘んじることなく時代を感じながら柔軟に対応していく姿勢に好感が持てた。
超長くなっちゃうけど、クレドの内容を書いておこう。
<—ここから—>
【クレド】
リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。
私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだそして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。
リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは、感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズを先読みしておこたえするサービスの心です。
【サービス・バリューズ】
私はリッツ・カールトンの一員であることを誇りに思います
- 私は、強い人間関係を築き、生涯のリッツ・カールトン・ゲストを獲得します。
- 私は、お客様の願望やニーズには、言葉にされるものも、されないものも、常におこたえします。
- 私には、ユニークな、思い出に残る、パーソナルな経験をお客様にもたらすため、エンパワーメントが与えられています。
- 私は、「成功への要因」を達成し、コミュニティ・フットプリントを実践し、リッツ・カールトン・ミスティークを作るという自分の役割を理解します。
- 私は、お客様のリッツ・カールトンでの経験にイノベーション(革新)をもたらし、よりよいものにする機会を常に求めます。
- 私は、お客様の問題を自分のものとして受け止め、直ちに解決します。
- 私は、お客様や従業員同士のニーズを満たすよう、チームワークとラテラル・サービスを実践する職場環境を築きます。
- 私には、絶えず学び、成長する機会があります。
- 私は、自分に関係する仕事のプランニングに参画します。
- 私は、自分のプロフェッショナルな身だしなみ、言葉づかい、ふるまいに誇りを持ちます。
- 私は、お客様、職場の仲間、そして会社の機密情報および資産について、プライバシーとセキュリティを守ります。
- 私には、妥協のない清潔さを保ち、安全で事故のない環境を築く責任があります。
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(図)
ミスティーク
↑
エモーショナルエンゲージメント
↓
機能的
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【サービスの3ステップ】
- あたたかい、心からのごあいさつを。お客様をお名前でお呼びします。
- 一人一人のお客様のニーズを先読みし、おこたえします。
- 感じのよいお見送りを。さようならのごあいさつは心をこめて。お客様のお名前をそえます。
【モットー】
“We are Ladies and Gentlemen serving Ladies and Gentlemen.”
【従業員への約束】
リッツ・カールトンではお客様へお約束したサービスを提供する上で、紳士・淑女こそがもっとも大切な資源です。
信頼、誠実、尊敬、高潔、決意を原則とし、私たちは、個人と会社のためになるよう、持てる才能を育成し、最大限に伸ばします。
多様性を尊重し、充実した生活を深め、個人のこころざしを実現し、リッツ・カールトン・ミスティークを高める・・・リッツ・カールトンは、このような職場環境をはぐくみます。
<—ここまで—>
そうか、だからバーで席についた時に、名前を聞かれたのか・・・。
派手で目立つサービスというわけではないんだけど、さりげなく、邪魔にならないおもてなし加減が心地よいと思った。テーブルに来てくれるタイミングや、話しかけてくるタイミング、絆創膏をはっていたら「大丈夫ですか?」と声をかけてくれる気遣いとか、こうやって字にしてしまうとなんてことないんだけど、それぐらいの普通のことを絶妙に、気持ちよくやってくれるというところが素敵なのね。