『日本のファッションカラー100 流行色とファッショントレンド1945〜2013』
Posted in 未分類 on 4月 29th, 2014 by chibirashka – Be the first to comment身の回りには色が溢れています。
あまりに当たり前すぎて普段は逆に意識さえしないかもしれないですね。
でも、こんなことありませんか?
真っ青な空に白い雲が浮かび、すべてが明るく見えるような晴れた日にはなぜかエネルギーがみなぎってる感じがしたり、逆に曇りがちで全体的にくすんで見えるような日にはやる気が出なかったり…と、なんとなく色から影響受けること。
あるいは、
朝着替えるときに「今日はなんとなくこの色を着たいな」と感じたり、逆に、前の晩から準備していた服なのに当日になってみたら「なんかこの色の気分じゃない」と感じたり…。自分でもちゃんと理由を言えないけれど、なんとなく精神状態に合わせて色を選んでるってこと。
色ってその時々の気分を反映するもので、気分によっては受け入れられない色っていうのもあるように感じます。
自分一人のなかで見てもそうだし、社会全体としてみれば、色はその時々の空気感を反映し、時代を作っているとも言えます。
そんなような内容を扱った面白い本を読んだので、今日はそれをご紹介。
本のタイトルは『日本のファッションカラー100 流行色とファッショントレンド1945〜2013』(ビー・エヌ・エヌ新社)
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先日開催したワークショップの参加者アンケートや、以前社内で開催したファッションセミナーのアンケートなどをみていると「色の合わせ方を知りたい」とか「自分に似合う色を知りたい」とか「いつも同じような色を選んでしまう」といったように、色に関するコメントがけっこうあがってきます。
実際、洋服のデザインやコーディネートを見ていくときの3大要素(「カラー」「テクスチャー」「フォルム」)に入っているだけあって、やはり色の影響は大きいです。形を認識するよりも色を認識する速度の方が早いので第一印象を大きく左右する要素でもありますね。
そうしたことから、パーソナルスタイリストがスタイリングをしていくときにも「パーソナルカラー」を取り入れることもあります。「取り入れることもある」と限定的に言ったのは、パーソナルカラーを身につけていればそれだけで素敵になれるというわけではなく、あくまで全体的なバランスであったり、将来を見据えた指向性であったり、そういうこと全てを鑑みてスタイリングするのであって、必ずしもパーソナルカラーばかりに引っ張られすぎるわけではないという意味です。
ちょっと話がそれましたが、ファッションに興味がある人にとっては、専門的な知識まではいらないとしても、色について興味を持っている人は多いと思います。
そんな人におすすめなのがこの本。
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◆ この本の特徴
カラーの本というと、いわゆる色相環のチャートが載っているようなものとか、「色とは反射によって…云々」というような仕組みの理解に関する記述が載っているようなものを思い浮かべる人も多いと思いますが、この本は違います。
カラーから見たファッショントレンドに関するトピック100個が、見開きで1トピックずつイラスト入りで紹介されています。戦後(1945年)から現代(2013年)までがカバーされているので、なんと1冊読むだけで、日本のファッショントレンドの変遷が分かるのです!
トピックごとというのがポイントですね。カラーやファッションのトレンドって、1年でぴったり終わったりするものではないし、トレンド間で影響を受け合って次につながるということがあるので、むしろ年毎に扱うのは難しいですが。
若干厚みのある本なので「こんなに読めるかなー」と一瞬思うけど、あっという間に読めてしまいます。興味の持てることが書いてる本っていうのは、普段仕事で読むような専門書読むよりあっという間に読めちゃうのね…。しみじみ…。
◆ いくつかのトピックをご紹介
No. 001は「国防色と国民服」という固く地味なトピックからスタート。
イラストにはカーキ色の国民服の男性ともんぺ姿の女性が描かれています。戦争映画とかでよく見かける感じの。そして文章を読んでいくと、「国民服が義務付けられていた」「40年には国民服令が交付され」「被服統一運動」といったくだりがあって、戦時下の規制のなかでの装いに関する状況が伝わってきます。当たり前だけど、今のように個人の自由で服を着られるということが平和であることの恩恵なんだな…と感じてしまいます。
No. 007は「ディオール旋風」
クリスチャン・ディオールによる「ニュールック」の流行を皮切りに、53年にディオールが来日したこともあってパリモードが大きな影響を及ぼすようになった。でも実は伏線があって、日本が直接パリのモードに影響を受けたというよりは、戦後、日本の女性は進駐軍の奥さんやお嬢さんたちのファッションに影響を受け、「ニュールック」もアメリカを経由して「アメリカンルック」の1つとして日本に入ってきた、というような流れも、トピックNo. 002〜004あたりを見るとわかったりするのです。
その後、ミッチーブームやアイビールック、みゆき族、ヒッピー、ハマトラ、竹の子族、オリーブ少女などなどを経て、
No. 052では「ボディコン」
懐かしい…。私自身はその年代じゃないけれど、小学校時代とかに見ていたようなトレンディドラマとかに出てくるのがこういうファッションだったり。色についてだけでなく社会背景やスタイリングの特徴なんかも書いてあるのが面白い。
そして、渋カジ、B系、やまんばギャル、ギャル男、セレブカジュアル、ゴスロリ、コスプレなどを経て、
No. 096では「原宿KAWAII」
もはや欧米でも人気となっている、きゃりーぱみゅぱみゅに代表されるような原宿のカワイイファッション。渋谷、高円寺、などエリアごとに原宿との違いについても触れられていたりします。
で、最後のNo. 100は「発光表現」で終わるのですが、iMacなどに見られるような半透明のプロダクトの出現や、そもそも反射型 “デバイス” である紙から発光型デバイスであるスクリーンへと移り変わり環境が変化している状況、そしてそもそものテクノロジーの進化によって服地にも発光素材を取り付けることができるようになってきたことなど、様々な要素がからみ合って、光の表現がさらに注目されているとのこと。
なので、トピックの合間合間には、直接的にファッションに関することだけではなく、自動車や家電などプロダクトにおけるカラーのトレンドなんかについても扱われています。
プラス、本の冒頭では、戦後から現代までのおおまかな流れが見開きで分かる図表があり、
また、巻末には戦後から現在までの政治・経済、生活文化・風俗、ファッショントピック、カラートピックを年毎にまとめた年表も!
それから、この本のいいところは、全部同じトーンのイラストが使われているところ。
古い年代も現代も、写真などの歴史資料ではなく同じようにイラストで描かれているので、「なんか古臭い」といった余計な情報を排除して、フラットに比較することができるのです。
単に読み物として読んでも面白く、また後々レファレンスとして活用することもできそうなので、何かしらファッションにまつわる仕事に就いている人はマストで読んだ方がいい本だと思います!
◆ この本のおすすめの読み方
ファッション関連の仕事についていない人でも、それぞれのトピックで示されている年代と照らし合わせながら、「自分はその時どんな服着てたかなー」と思いだしてみるのも楽しいかも。
「ファッショントレンドには興味ない!」と思っていたのに、案外、イラストに描かれているようなアイテムやカラーをまとっていたことに気づいて、なんだかんだ気づかぬうちにトレンドに乗っかっていたんだなと気づくこともあるかもしれないし、あるいは社会的には不景気でドヨーンとした空気のなか、ややコンサバで誠実な感じの色が流行っていたのに、自分だけは「自分史上最高のハッピーな時期で、時代と逆行して超派手な格好してた」なんてことに気づいたりするのかもしれません。
または、巻末の年表をみながら、自分が生まれた年や就職した年にはこんなことがあったんだ…と見てみるのもおすすめ。
ちなみに私個人としては、「Vivayou」「Scoop」「Ba-tsu」「Nicole Club」といったブランド名を久しぶりに目にして超懐かしい!と思ったり、渋カジ、キレカジのあたりを読んで、ちょっと前にCSで見た「東京ラブストーリー」の再放送を思い出したりしました。
◆ 日本人とファッション
そして全体を通して思ったのが、日本人がファッションに対して柔軟な感性を持っているということ。
規制やそれまでの既成概念的なところがあったとしても、新しいことを取り入れることを恐れないというか、「自分達が絶対だ!」というのではなく「あら、いいんじゃない?私もやってみようかしら。」と好奇心を持って受け入れ、自分たちのものにしていくのがうまいと感じるというか。日本は全体的に、一般人であってもファッションのレベルが高いと言われるのはこのあたりに関係があるのかな。
でも、そうは言っても「自分のファッションには自信がない」「もっとファッションで素敵になれたらいいのに」と感じている人が多数なのも事実。
日本人らしい感覚を持ちながら、世界でも通用するような装いに関する知識や経験を積み重ね、「洋服を着ることが楽しい」と感じ、装いから自分に自信が持てるよう、普通の人をサポートしていくのがパーソナルスタイリストがやっていくべきことかなーと思いました。
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