Archive for 2月, 2012

スイスの民間防衛

Posted in Book on 2月 21st, 2012 by chibirashka – Be the first to comment

[Summary]
This article is about a book introducing civil defense of Switzerland. The original book was published and distributed to every family by Swiss government in 1969. Since it was edited according to the situations under the Cold War, the book is not referred in Switzerland anymore. However, we maybe find some clues to protect ourselves physically and mentally especially after experiencing earthquake disaster.

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気づけばしばらくブログ書いてなかったなー。

「IA塾 in 京都」とか「World IA Day」とか、マウイでクジラ見たとか、標高3055mのハレアカラで美しいサンセット見たとか、面白いことはいろいろあったんだけども…。

ま、それはいつか書くとして(きっと書かなそう)久しぶりに面白い本を見つけたのでご紹介。

民間防衛 新装版―あらゆる危険から身をまもる スイス政府編さん

書籍「民間防衛 新装版―あらゆる危険から身をまもる」

大学受験のため先週から我が家に滞在している年の離れた高校生の弟に教えてもらって、Amazonで購入した。

私が買った本は2011年5月12日 新装版第27刷。
原書房のサイトをみてみると、2003年7月7日刊となっている。

すでに多くの人が読んでいる本なのだと思うけど、IA、UX、デザインシンキング、ビジネスモデル、マーケティング、マネジメント‥というようなジャンルを中心とした普段の私の購入履歴からはAmazonのレコメンドではひっかかってこなかった。冒頭で「面白い本見つけた」と書いたけど、万人にとって面白いであろうとかいう意味ではなく、普段あまり読まないジャンルだから面白いと思ったって感じね。

この本は、スイス連邦内閣の要請によって連邦法務警察省が発行したもので、スイス政府によって各家庭に配布されたというもの。その内容は核兵器、生物兵器、化学兵器について、消火活動や救助活動、戦争の危険について‥などなど、かなりショッキング。

「永世中立国」というとなんとなく戦争と無縁で安全が保障されているように考えがちだけれども、陸続きとなっているヨーロッパに位置しているという地理的条件、食料品や燃料などの多くを輸入に頼っているという世界経済への依存を考えれば、スイスだって安全といえないし、現時点で周辺国と緊張関係にあるわけではないものの当然のことながら将来どうなるかは誰にも分からない。

何が起きるかは分からないのだし、自由や平和は決して努力なしに永続的に享受できるものではないのだという姿勢に立って、危険から身を守る、あるいは常日頃から備えておくために、具体的な方法を示しているというのがこの本。

たとえば、避難所はどのようなところでないといけないか、そこで長時間過ごすためにどのような物資がどれぐらい必要か、有事の際、指揮命令がどのように組織されるか、生活用品の供給が制限されるときに備えて各自が準備しておくべき物資は何か(一人あたり米2キロ、砂糖2キロ、脂肪1キロ‥そしてその保存方法)、核爆発の圧力波に対する防御はどのようにしたらいいか、傷病者への応急手当の方法(例:意識混濁で呼吸困難な男性への処置、失神している女性への処置‥)といったことが図やリストを用いて説明されている。

化学兵器への備えのページ

巷にあふれるサバイバル術を紹介する本と違うのは、単に物理的な破壊活動とか、自然災害といったもののみならず、政治、経済、心理に至るまで危機が想定され、国民ひとりひとりがどのような決意と意志を持って対処するべきかといった心理的な防衛にまで及んでいること。しかも盲目的にではなく。

いくら想定し、どれだけ国民ひとりひとりが備えたところで、想定外なことは起こるものだし、完璧なんてありえないけれども、政府として少なくともこれだけの危機感を持っているんだなということが分かる。

単なる議論ではなく、具体的な指示として、誰が読んでも理解できるような方法で提示しているというところもすごい。

3.11の震災以降、「普段の生活が送れることは当たり前ではないんだ(ありがたいことなんだ)」と、経験から認識するようになって、日本でも一人ひとりの防災意識は高まっていると思うし、ああいう災害が起きたときに誰に言われずとも周囲と協力しあって、(少なくとも表面的には)大規模な暴動を起こすこともなく、礼儀正しく他人を気遣う振る舞いができた国民性は世界からも賞賛されたけれど、本当に危機に備えるためにはボトムアップだけではなくてやはりトップダウンも必要なんじゃないかなと思う。

この本が配られた各家庭が実際のところどれぐらい備えているのかは知らないけど、ボトムアップでできることがらについてトップダウンで提示できる国って強い気がするなと思った。

気になったのでちょっとWiki読んでみた。
http://ja.wikipedia.org/wiki/民間防衛

民間防衛とは
民間防衛(みんかんぼうえい、civil defense)とは、武力紛争等の緊急事態において市民によって国民の生命及びインフラストラクチャーや公共施設、産業などの財産を守り、速やかな救助、復旧によって被害を最小化することを主目的とする諸活動をいう。民防と略される。文民保護の機能もある(日本では国民保護に相当)。

ついでに読み進めてみたところ、このスイス政府から「民間防衛」が配布されたのは1969年で配布数は260万部らしいけど、そもそも冷戦に基づいた本であるため現在でスイス国内で使われることは全くないそうです。

ふーん。

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