カンファレンス・勉強会・仕事

UPA2009@Portland報告会

Posted in IA / UX / HCD / UI, カンファレンス・勉強会・仕事 on 6月 25th, 2009 by chibirashka – 3 Comments

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今日は、UPA 2009 International Conferenceの報告会(HCD-Net主催)に行ってきました。

UPA はUsability Professionals’ Associationのことで、ユーザビリティやユーザー中心設計の知識体系を整えていくようなこととか、Human Centered Designの観点から、ユーザビリティの専門家達を支援する活動をしている組織。私も会員登録している(今のところは活動してないけど)。

UPA 2009は、そのUPAのアニュアルカンファレンスで、今年は6月8日〜12日までオレゴン州ポートランドで開催。前々からサイボウズやカレンダーに登録はしておいたものの、(ビビリぃなので)イマイチ踏み切れず、私はポートランドにはいけなかったので、せめて、報告会でも行こう!と思って、会場のミツエーリンクスさんへ。

報告会のアジェンダは、

  • UPA2009の概要説明(HCD-Net国際事業部の金山豊浩さん)
  • Beginner視点で見たUPA2009(ミツエーリンクス Reva Glassmanさん)
  • 参加したプレゼンからのいくつかのトピックス(サイバーエージェント大塚敏章さん)
  • スペシャルイベントについてのお知らせ

という感じ。

【HCD-Net 金山さんの報告】

UPA2009には21カ国から550名の出席があったとのことだけど、去年の出席者は800名だったということなので、IA Summitもそうだけど、景気の影響で随分減っている。でも、カンファレンスのプログラム自体は、77のチュートリアル(講義型)、54のワークショップ、103のセッション(プレゼンテーションとか)、その他Posterや展示などと、かなり充実していたよう。

ユーザビリティのプロフェッショナルが多く集まるカンファレンスということもあり、ホスピタリティも随所に感じられるものだったらしい。IA Summitでも見られたメンターブースのようなものや、Jobボードなどはもちろんのこと、カンファレンスでせっかくポートランドに来た人達のために、観光スポットやレストランなんかを紹介してくれるような「UPA Hospitality」というブースもあったとのこと。

また、新しくUPAに入った人や、今回初めてカンファレンスに参加する人にもとてもWelcomeなムードが漂っていたそうで、New Peopleのネームホルダーにはピンク色のステッカー(逆にスピーカーなんかはブルーのステッカー)が貼られて、親しく声をかけてもらえるような仕組みもあったとか。

また同時に、配布されるカンファレンスプログラムの中で、初心者向けのセッションは色分けされていて、どれを受講したらいいか分かりやすくなっているということと、その初心者セッションを受講するとスタンプラリー式にスタンプがもらえ、いくつか揃うとユーザビリティについての基礎知識を持った人と認定されるような「Usability Fundamentals Programs」というのもあったということで、ユーザビリティの大切さの認知が高まるにつれ、エキスパートの育成や認定といったことへの取り組みも進んでいるようだった。

※日本では、5月に内閣官房IT担当室から「電子政府ユーザビリティ・ガイドライン(案)」が公開されて、その中で、ユーザビリティの専門家の参加の必要性が書かれているので、スタンプラリーかどうかは別としてw、こうしたエキスパートの育成や認定への取り組みは今以上に必要になりそう。(⇒長谷川さんのブログの「HCD-Netシンポジウムと電子政府ユーザビリティガイドライン」という記事に詳しく書いてあります)

【ミツエーリンクス Revaさんの報告】

今日の発表者の1人のRevaさんは、ユーザビリティ分野に関しては全くの素人という立場でUPA 2009に参加されたそう。新人にとってUPAが有益である理由として、

1. to meet people
世界中から多くの人が集まるカンファレンスなので、1カ所でポテンシャルビジネスパートナーから、競合から、現時点で取引しているような人たちから、自分がやりたいと思っていることをやっているような人たち、ヤコブ・ニールセンなどユーザビリティ分野のスターまで、さまざまな人にたくさん会える

2. to learn
変な独自解釈をしてしまったり、bad habitが身に付いてしまう前に、専門家からベストプラクティスのような知識を得ることができる。特に、具体的な例や情報を聞けるのも、実践者からの話であるからこそ。ボキャブラリーやリソースに関する情報も豊富で、どのようにしたらもっと学べるか、どんな言葉がどう使われるか、といったことも分かる。

3. to be inspired
この分野のスターたちに会えたり、500名もの人たちが自分と同じようにユーザビリティにコミットしていると知るのが誇らしく感じられる。

4. to find a job
いわずもがな

といったことを挙げていた。

その他、彼女が取った、CUE(Comparative Usability Evaluation)に関するものやなぜフィールドワークが大事か、といったセッションについての話もあったけど、かなり駆け足。特にCUEの方は、「ヒューリスティックは99% badでsuck(無価値で最悪)である」と主張している人による、ユーザビリティテストやヒューリスティックにおける問題点とかって話っぽかったので、もう少し聞いてみたかった。

Revaさんのプレゼンテーションは英語でした。

【サイバーエージェント 大塚さんの報告】

ユーザビリティやUXの必要性を業務上感じていて、比較的最近UPAを見つけて入会し、UPA2009に早速行ってみた、という方。アメブロのUI設計をしている部門のマネージャー。いわゆるWeb業界の制作側とか、ユーザビリティに感度の高いプロダクトメーカーではなく、サービス提供事業者の方がこうした分野に入ってこられているのは、とても興味深い。

「UXとは何か」を取り上げた、Jared SpoolのKeynoteについては、

  • UX≠Usability
  • ユーザビリティだけ考えてるんじゃ、取り残される
  • 例えばAppleで言えば、アップルストア自体やスタッフの対応も、アップル製品を使っているのと同じような感覚、体験を提供できているかどうか、ということがUXを実現できているかということである
  • sustainable(長く使えることの大事さ)というのもポイント

というようなことを紹介してくれた。また、Jaredからの3つの質問ということで、こんなチェックリストの紹介もあった。

あなたの会社のUXヘルスチェック

・Vision
チーム全員が自社のデザインが5年後どう使われているか説明できるか?
※UXってある程度長期的視点で実現されるべきなので、5年。

・Feedback
最近6週間いないに、自社または他社のデザインの利用を2時間以上かけて観察したことがあるか?

・Culture
最近6週間以内に、デザイン上の失敗を見つけたメンバーに報酬を与えたか?
※問題を発見できる人材を発掘、育てることが大事。

自問してみましょうww

その後の、Nathan Shedroffの「どうやってUXをデザイン戦略に落とし込むか」というセッションの話では、

Experiences are designable(エクスペリエンスはデザイン可能である)とし、エクスペリエンスには5段階のステージがあることを紹介。

  1. MEANING:意味(価値観やアイデンティティが利用者にどんな意味があるか)
  2. VALUES:価値観/アイデンティティ(どういう自分になっていけるかとか)
  3. EMOTIONS:感情(使用感についての感情とか。感情は一定してるわけじゃないから、↑のアイデンティティが大事。)
  4. PRICE:価格(価値観になり得る。価格帯が高いことに意味があるとか)
  5. FEATURE:機能面

また、エクスペリエンスの意味として、15個のコア属性が挙げられた。例えば、Accomplishment, Creation, Beauty, Community, Harmony, Oneness, Freedomなど。提供するエクスペリエンスが15個全部を満たす必要があるということではなく、ブランドやサービスによって特徴となる属性は異っていて良い。(AppleだったらCreation,  Community, Freedom。ディズニーだったらWonderとホニャララとか)

また、ブランド間でコア属性が異なるという話と同時に、Corporateとしての意味、Teamとしての意味、Customerとしての意味、といった三者間でもそれぞれにコア属性はあるもので、それぞれが持つコア属性のうち、重なる部分が特に優先されフォーカスされるべき属性であり、そういったことを考えるのが戦略的デザインだ、というような話だった(と思う)。ここももうちょっと聞きたかったな。

ほかにも、ゲームデザインにおけるユーザビリティテストの話とか、Yahoo! GO(モバルサイト)におけるモバイルのユーザビリティ手法といった話が駆け足で紹介された。

うーん、なんでしょう。正直言って、UPAの会員であるものの、UPAとIA Summitってどう違うんだろう、というようなのがあんまり分からなかったんだけど(UPAはユーザビリティで、IA SummitはIAで、共通項としては多分UXがあって、というのはおいといて)、感覚的に今日思ったのは、IA Summitの方がより概念的で、UPAの方は具体的な調査手法など実践的かなということ。もっと穿った見方をすると、IA SummitというかIAの方は、ユーザーなり情報なりを類型化するといった意味で、ユーザー1人1人というよりはもっと俯瞰して全体を見てる感じで、UPAというかユーザビリティの方は、ユーザー1人1人をよく見ているという印象。あー、そうやって書くと、なんかちょっと語弊があるな。うまく説明できないけど、そんな感じ。

UPAカンファレンスで得られるものが、具体的にイメージわかなかくて、IA Summitとの差とかもあんまり腑に落ちてなかったから、今回ポートランドに行こう!絶対行ってやるー!とまでは思えなかったんだけど、なんとなく、IA SummitとUPAの使いわけ(?)というのが分かったので、来年はちょっと行ってみたいかも、と思った。

ちなみに2010年は「Embracing Cultural Diversity -UXD for the world-」というテーマで、ドイツのミュンヘンにて開催されるんだって。テーマも面白そう。うーん、でもなー、どうせ行くなら、何か発表とかしてこないともったいないし、そう思うと、なかなかハードルも高いから、行けるかどうかはビミョー(やっぱりビビリぃ♪)。

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CSS Nite in Ginza, Vol.36

Posted in IA / UX / HCD / UI, カンファレンス・勉強会・仕事 on 6月 19th, 2009 by chibirashka – 4 Comments

銀座アップルストアで開催された、CSSNite Vol. 36に行ってきました。

今日はさとさんによる
『インフォメーションアーキテクトの過去、現在、そして未来。
The past, present, and the future of Information Architect』

という講演でした。

ブレブレですみません。。。orz

ブレブレですみません。。。orz

さとさんには、IA Cocktail Hour等々でいつもお世話になっていますが、講演を聞くのは初めて。長くIA、UXといったことに携わっているさとさんのような方しか語れないような情報ばかりで、知らないことがいっぱい!90年代マルチメディアっぽいものが出てきたころのこと、インターネットが出てきたころのこと、情報が増えてサイトが巨大化してきた時期のこと、ノウハウが蓄積されて、メソッドが集約されたりして、デザインファームの統廃合があったこと・・そうした背景的なことから、プロジェクトにおけるIAの役割とか、情報につながった空間、情報環境を場としてデザインするエクスペリエンスデザインといったところまで、広く話してくれました。ま、ともかく最近あちこちでIAというキーワードを目にするけど、別に決して新しいことじゃないんだよ、というお話。

それにしてもCSSNiteの集客力には驚かれます。鷹野さん、いつもありがとうございます。今日もものすごい立ち見が出て、床に座り込む人もいっぱいいて、ものすごい熱気!

CSSNiteの驚異的な集客力

CSSNiteの驚異的な集客力

CSSNite後の懇親会も大盛り上がりでした。

いろんな人が来ていたけど、その中でも一番の注目は、サービスインから1週間が経ったkeireki.jpの中の人、浅枝さんとクリストファーじゃないかしら。

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浅枝さんとクリス

めちゃ面白い人たちだったなー。クリスの日本語の流暢さ加減にはビビった。そして、浅枝さんには、iPhoneのBumpというすごいアプリを教えてもらって、かなり大盛り上がり!今日提供開始されたiPhone OS3.0よりも私にとってはインパクト!「すげー、衝撃波で情報が交換されるとは!」とか思ったけど、そんなわけないね。位置情報で交換してんのかね。

keireki.jpについてはこないだ記事書いた通り、本名ベースの社会人コミュニティなわけだけど、ニックネームの登録もできるのね。普通、ニックネームって、本名を隠すために使われるものだけど(例えばmixiとか)、keireki.jpの場合、本名を隠すためじゃなくて、本名が分かってもらえるようにするためのニックネームなんだよね。

TwitterとかTumblrとか、フォローによってゆる〜くオンラインで繋がっている知り合いのことって、ニックネームでは認識できても、本名に馴染みがなかったりするから、本名を補完するためにニックネームがあるっていうのはとてもmake sense!面白い。

あと、「たしかに!」とか「イイトコ」っていうのも深いな〜と思った。よくできてるなぁ〜。

おしまいに、とっておきの写真を載せておこう。こんなツーショット滅多に見られない!この写真だけを切りとると「長谷川さんという名字の人は花柄のシャツを好んで着る傾向がある」とか、間違った分析しそうww

長谷川恭久さんとコンセントの長谷川敦士さん

長谷川恭久さんとコンセントの長谷川敦士さん

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第23回WebSig会議

Posted in カンファレンス・勉強会・仕事 on 6月 9th, 2009 by chibirashka – 2 Comments

土曜日、久しぶりにWebSig会議に行ってきました。

今回は、『ストレスフリーのWebプロジェクト ~Web担当者に出来ること、制作会社に望むこと~』というテーマにあるように、Web制作サイドと発注サイド双方の視点がシェアされました。

制作サイドとしてネットイヤーグループの片山さん、発注サイドとしてフジイユウジさんがスピーカー。

いくつか刺さりポイントを。

【片山さん】

  • 買い物の時は、自分で経験し選択させることが購買行動自体の満足につながる
  • Web作りはオーダーメイド。自分の欲しい/着たい服を的確に答えられるような、オーダーメイドに慣れている人はそういない。モード系はこんなだよ、カジュアル系はこんなだよ、と方向性を示してあげることが必要
  • 相手のことをよく知り、何故その発言が出てきたのか裏を知ることが大事
  • エンドユーザーの満足度と同じように担当者の満足度を上げ、態度変容させることが必要
  • ローコンテキスト(TRY&ERRORで、言われたことをママやってやっては直して・・の繰り返し)よりもコンシェルジェ的なハイコンテキスト

【フジイさん】

  • 発注サイドは仕様書よりも「自分の言ったこと」を重視する傾向がある。
  • 仕様書と議事録は別に。発言ベースのものも大事に。
  • ワークフロー全体についての説明を聞きたい。スケジュールという観点だけでなく、プロジェクト設計の方針とか
  • 請負契約か売買契約かで、工数に価値があるのか、納品物に価値があるのかと、重要視するものが変わる。契約書がプロジェクトの内容を表現するものである

当たり前といえば当たり前なんだけど、まっとうにプロジェクトに携わっていれば、制作側 VS 発注側という対立構造になることはないよね。お互いがお互いのことを思いやり、ゴールをちゃんと共有できれば。

プロジェクトは有期的独自性がある。プロジェクトが変われば、同じクライアントだとしても同一のディレクターが担当する義務はないとも言える。でも、発注側としては業者選定の際に、類似プロジェクトの経験があるかどうかということを意識していたり、その先にある期待としては、その過去のプロジェクトを経験した同じ人に担当して欲しい、ということがあるだろう。

もちろん、そのディレクターにしかできない、分からないということだと、あまりに属人的すぎて、代替が効かずリスクになるので、「頭の中にしか仕様がありません」というわけにはいかない。

とはいえ、同一のディレクターだからこそ、ノウハウが効率的に蓄積され、クライアント企業側の文化、独特の言葉などを深く理解できるということは実際あると思うし、そこは、受託側が提供できる付加価値でもあり、武器でもあると思う。

(ディレクターって書いたけどPMでもデザイナーでも)

ロンチのためだけじゃなく、長期に渡る運用まで見据えて、クライアントを支援し続けることのできる存在でありたいですね。>誰

前日の夜にオールナイトで遊んでしまって、フラフラな感じでWebSig行ったんだけど、片山さんのお話もフジイさんのお話も、どっちも納得で、最後までシャンとした気持ちで聞けました。

あと、講演とワークショップの後には、オープンマイクもやらせていただきました。「発表するほどでもないだろ!」と突っ込みがありそうだけどさ。。。ありがとうございました。

モデレーターのみなさん、司会のだいちゃんもお疲れ!

WebSigオフィシャルサイト:第23回WebSig会議が盛況の後終了しました!資料公開

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IA/UX研修(ワークショップ)

Posted in IA / UX / HCD / UI, カンファレンス・勉強会・仕事 on 4月 26th, 2009 by chibirashka – Be the first to comment

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金曜日の午後、代々木公園のオリンピックセンター研修室を借りて、社内研修を行った。元々は、IA/UXチームの研修会として企画が持ち上がったのだけど、PMやディレクターや、コンセントにいるメンバーはできるだけ出た方がよい、ということになったので、ほぼ全員参加の研修に。

研修の前半は座学でのIA、Webプロジェクトのプロセスといった内容で、後半はワークショップ型でいくつかのサイトをヒューリスティック評価するというもの。

昨年の吉田塾以降、社内のマーケ部、ログ部といったクラブ活動(自主参加型勉強会)の中でも、ワークショップを行うことが多い。内容はさまざまなので、ここでは割愛するけど、どのワークショップでも必ず感想として挙がるのは「時間が足りない」ということ。

今回のワークショップでも、正味小一時間で、ブレスト的なポストイット書き出し(個人ワーク)、サイトマップ作成(デカイ紙に)、書き出したポストイットのグルーピングと、課題の抽出、発表準備まで行う必要があり、「あ〜、全然終わらんっ!」っていうのが真っ先に思うところだった。

ユーザビリティ評価として、ヒューリスティック評価のほかにユーザーテストが挙げられることも多いけど、ユーザーテストに対し、エキスパートレビューとも呼ばれるヒューリスティック評価は、専門家の経験、知見、経験則により、比較的短期間で網羅的に評価できるのがメリットでもあるし、実際のプロジェクトで業務として行う時にも、限られた時間内で行う必要があるので、こういう訓練は必要だと思った。

サイトを評価する観点として、ざっくりと

  • 構造(サイトストラクチャ)
  • UI/デザイン(エリア-ゾーニング、要素、ナビゲーション、ふるまい)
  • コンテンツ

があるんだけど、そう分かっていても、時間もない!というプレッシャーが加わると、どこから見ていっていいのか分からなかったり、あちこちクリックして見てるつもりでも、焦るばかりで評価できるほどにはちゃんと見ていないなんてこともある。(課題になりそうな「何か」に気づけなかったらどうしよう・・というような不安とかもあり)

この辺もやはり訓練次第なんだろう。どのサイトも(基本的には)オーダーメイドなのだから、まず、ここから見れば絶対にOKです、なんてことはないだろうし。

というわけで、ヒューリスティックの「いろは」というわけにはいかないけど、各チームの発表やそれに対する長谷川さんの総評などから、今後覚えておきたい(いや、知っていてもなかなかできないことが多いから念頭に置いておきたい)ことをメモ的に挙げておく。

【評価時】

  • そもそもユーザビリティ評価をしているにも関わらず、「ユーザビリティが良くない」と判断するのは意味がない。どこがなぜ、が分からないと。
  • ECサイトの評価では、実際の購入フローを重点的にチェックする
  • 使う人の気持ちでのシミュレーション(認知的ウォークスルー)ができると良い。
  • 個々のインターフェースを細かく取り上げて説明するより、それが何の問題であるかを言ってしまうと良い(これこれのリンクルールが違っていたり、各メニューごとにレイアウトが違っていたり・・云々 ⇒ デザインガイドラインが定まっていないように見受けられる)
  • そのサイト(または企業、事業者)独特の問題があれば、それをポイントに考えてみるのもよい(例:既に広く認知されたブランドの場合は、そのブランドで期待されるエクスペリエンスがサイト提供されているかどうか・・など)
  • メニューやコンテンツといったサイト内の要素だけでなく、サイト自体の立ち位置(B2BかB2Cかなど)を俯瞰して見てみる

【発表時】

  • 全体のうちのどの部分を話すのかを最初に明らかにする(例:サイトの全体構成はこれこれこういう風になっていますが、今回評価するのはこの部分です。)
  • 仮説を置いて説明する
  • 有限の時間では最初に結論を言えると有益(例:重複コンテンツが多く見られるのが問題だと思いました。なぜなら・・・)
  • 事実なのか評価なのかを分けて話す

私自身の反省と今後につなげたい点としては、時間配分もだけど、チーム内役割分担かな。同じチーム内にリテラシーの極端に低い人がいる場合に、どうやって進めるかをよく考えないと、その人があまり参加できないままになりグループワークであることの意義が埋もれてしまう。

というのも、たとえば、書き出したポストイットをある見出し(文脈)でグルーピングしているそばから、「こっちのグループのポストイットにもあっちのグループのポストイットにも”メニュー”という言葉が書いてあったので、ひとまとめにしてグループにしておきました」と言って、文脈を崩されてしまう場面が多々あったから。「うんとね、言葉で分けているわけではなくてね・・・」みたいな・・(汗)

こうなると思考が思わぬところで止まってしまったり、作業のやり直しが発生したりしてしまう。だからといって、「構造というのは・・・」「UIというのは・・・」「ふるまいというのは・・・」から説明するのも時間的に厳しかったりするし。。。今回は、若干自己嫌悪になりつつも牽制しながら(謎)、それとなくカタチにしたんだけど、グループワークでやる以上は、参加者全員が同じぐらいの力を出して、同じようにアイディアを出したり発表するのが望ましいと思うし、知識や経験の差によって見方が違うからこそ新しい発見もあるかもしれないしね。なんとかその辺の課題をクリアしていきたいと思った。ヒューリスティック評価自体の話じゃないんだけど、どちらかといえばファシリテーション技術なのかね。

なかなか奥が深い。。。むずいな、ワークショップ。

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HCD-Net:地方自治体Webサイトのユーザビリティ評価2008報告会

Posted in IA / UX / HCD / UI, カンファレンス・勉強会・仕事 on 4月 23rd, 2009 by chibirashka – 4 Comments

今日はHCD-Net(人間中心設計推進機構)地方自治体Webサイトのユーザビリティ評価(引越部門)2008結果報告会に行ってきた。

昨年9月12日に、HCD-Netが主催する、地方自治体ホームページ(引越タスク)のユーザビリティを評価するワークショップに参加し、その実践編というカタチで、アサインされたいくつかの自治体サイトの評価を何度か行ったという経緯がある。

【本自治体サイトユーザビリティ評価の方法】

事前審査:
人口13万人以上の地方自治体305サイトからHCD(Human Centered Design)の専門家のヒューリスティックにより114の自治体サイトを選出。

1次審査:
HCD-Net規格化/認定事業部のメンバーが簡易評価シートを用いて、基本的な引っ越し手続き情報の掲載とある程度のユーザビリティが確保されている52サイトを抽出。

2次審査:
上記ワークショップを受講した審査員で評価。

最終審査:
HCD-Net理事および規格化/認定事業部メンバーにより審査。1次審査結果を検証する方法により、1次審査でトップ10にランクしたサイトをエキスパートレビューの観点で協議。総合1位〜3位までの3サイトと優秀サイトとして2自治体を選出。

ちなみに、2007年度も同様の自治体サイト審査を行っているんだけど、その、ペルソナ・シナリオ法を用いた評価プロセスについては、DESIGN IT! magazine vol. 1で詳しく取り上げられているので、興味ある方は雑誌を読んでみてもいいかも・・・。と、思ったら、オンラインで読めるようになってた!

【2008年度ランキング】

総合1位:兵庫県尼崎市

総合2位:千葉県習志野市

総合3位:茨城県ひたちなか市

優秀サイト:川崎市麻生区

優秀サイト:愛知県小牧市

今日の報告会では、これら自治体への表彰と、ワークショップ受講者(審査員)への認定証授与が行われた。「認定証っておおげさな!」と思うんだけど、それは、徐々に高まって来たユーザビリティ専門家の必要性に対して、規格化や認定システムを作っていこうとする活動の一環でもあるっぽい。

ワークショップ修了証

ワークショップ修了証

HCD-Netでは、内閣府内閣官房IT担当室からの要請を受けて、電子政府向けのユーザビリティガイドラインの策定を行っているようなのだけど、今日のプログラムの冒頭で、黒須機構長から、こうした活動の概要報告があり、黒須先生はガイドラインの策定意義として次の3つを挙げていた。

  1. 国レベルでのユーザビリティへの取り組み
  2. ユーザビリティ専門家の必要性
  3. 官の担当者にユーザビリティの知識と意識を

この中の2つめが、認定システムへの取り組みを促進する契機になっているそう。

電子政府の現状としては、13,000申請書のうち、年間10万件程度の利用がある主要申請書は166に過ぎず、ネットでの利用が全くされていない(0%)ものが36.1%に上るとのこと。つまり、仕組みは作ったけど、使われていないってこと。

パスポートの電子申請の例が衝撃だったんだけど、開発コスト数十億を申請(発給)利用件数で割ると、1冊あたりの発給コストが数千万になるという、ダイヤモンドをちりばめるよりもよっぽど高価なパスポートになっている現実・・・。

と、まぁ、仕組みが使われない理由は色々あるんだろうけど、その1つとしてHCDの検討不足があるんだろう、というところから、今回のガイドライン策定の話が出てきている。

ユーザビリティガイドライン自体は、ユーザビリティ向上のための、個々のインターフェースを取り上げてまとめたものではなく、PDCAサイクルを明示し、プロセスを提示しているのが特徴とのこと。PDCAのPの部分だけで、ガイドラインの7割を占めるのだとか。これは、各省庁の担当者が、ユーザビリティをよく理解したうえで、RFPを記述することができるように、という意図がある。

この内閣府電子政府ユーザビリティ・ガイドラインについては、5月28、29日に札幌で開催される、HCD-Netフォーラムで詳しく説明されるそうなので、興味がある方は、行ってみてはいかがでしょう。

ついでに宣伝だけど、HCD-Netフォーラムでは、Myボス長谷川さんも、「成長するWebサイトリニューアルプロジェクト HCD-Netサイトリニューアルの事例紹介」という講演を行う予定なので、状況が許す方はぜひ札幌へ!

それにしても、ほんとソシオメディアの篠原さんって、素敵だわぁ〜。会う度にいつも感動する・・・。

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情報デザインフォーラム

Posted in IA / UX / HCD / UI, カンファレンス・勉強会・仕事 on 3月 29th, 2009 by chibirashka – 2 Comments

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IA Summitへ行ったりして、色々書かなくてはいけないことがたまっているのだけど、書きやすいところで、こちらから。

3月27日の金曜日、「情報デザインフォーラム」に出席するため、津田沼にある千葉工大まで行って来た。

予定より1日遅れでアメリカから帰国し、しかも帰りの飛行機で風邪をもらってきてしまい、翌日は会社を休ませてもらったので、病み上がりのまま参加。立つとふらふらする感じだったので、途中で倒れたらどうしようかと思ったけど、案外平気なもんだ。

情報デザインフォーラムは、

  • 基調講演
  • パネルディスカッション
  • ポスター発表+懇親会

という構成。

基調講演は増井俊之氏による「ユビキタス時代のユーザーインタフェース」というタイトルだったので、とても楽しみにしていった。

過去、テレマティクスのプロジェクトに関わっていたこともあり、私はユビキタスとか、家電連携とか、そういうキーワードに弱いの(謎)。

増井氏は、シャープ、ソニー、産総研、アップルなどを渡り歩いた方で、テキスト入力時の予測インターフェースを最初に作った方。そうした実績を買われアップルのiPhoneの開発に呼ばれたとのこと。

基調講演の中では、増井さんが個人的に提供/運用しているWebサービスの紹介が中心だったけど、本棚.orgが増井さんのサービスだったとは、この講演で初めて気づいた・・。本棚.org以外にも、増井さんはさまざまなサービスを展開していて、なぜWebサービスとしてやるのか?ということに対する答えとして、次のような点を挙げていました。

  • インストール不要でどこでも(ケータイでも)使える
  • 実運用でユーザテストができる
  • 集合知、情報共有、全世界の情報・・情報を一元管理できる
  • 既存サービスとのマッシュアップが容易
  • 流行れば大もうけ(今のとこはまだ大流行してないから儲かってない)

また、Webサービスとして成功するための要素の1つとして、ユーザーがそのサービスを通して何かを「自慢」できるかどうかも挙げていた。これはまさに私がここ1年ぐらい妄想し、立ち上げたいと思っているとあるサービスでも重要な軸だと考えていたことなので、ちょっと後押しをもらった気分。

その他、記憶に残ったキーワードとしては

  • 「ユビキタス=ユニバーサルデザイン」
    直感的な操作を可能にし、人間の能力を強化する
  • ユーザーの要求を待つのではなく、要求は自分たちが作り出すのだ

の2点かな。

基調講演後のパネルディスカッションは、増井さんの講演に対する、アサインメンバーの質問大会という感じ。

最後のポスターではコンセントからはSite-it! の発表を行いました。私が風邪で倒れたばかりに、大判印刷のちゃんとしたポスターを持っていくことができず、A3の紙を貼付けただけのものになってしまいましたが、現物のSite-it! やチラシを持っていったので、それなりに興味を持ってもらえたようでした。

そうそう、前からお会いしたいと思っていた田附さんにもやっとお会いできました。

津田沼は遠かったけど、行って良かった!

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WebSigのIA分科会

Posted in IA / UX / HCD / UI, カンファレンス・勉強会・仕事 on 1月 20th, 2009 by chibirashka – 6 Comments

料理ネタばかりエントリーしてましたが、たまにはそれ以外も・・。

土曜日にWebSigのIA分科会「明日から実践できるIA vol.3 ユーザー目的からユーザーフローを導き出す」に行ってきました。IA分科会の開催は3回目の今回で終了とのことなので、私が行くのは、最初で最後。

2部構成になっていて、第一部では、ネットイヤーの坂本さんによるライブIAという初の試み。第二部では、第一部の内容をグループワークショップで体験。

ライブIAと言っているのは、坂本さんが情報設計時に頭で考えていることを口に出して言い、実際見ている画面なども見せていくことで、思考プロセスをオーディエンスが追えるようにしたものです。

具体的には、東京都のサイトを例に挙げ、自治体サイトの良いナビゲーションを考えるプロセスを見せていただきました。

坂本さんのプロセスでは、
1. 価値基準を作る
その業界(この場合は自治体サイト)で、どんなサイトが一般的に優秀とされているかを知る。さらにその中で、自分が作りたい(好きだなと思う)のはどんなサイトなのか、モデルになるサイトを選んで、自分の方向性を決める。

●利用できるもの
各種サイトランキング調査

●具体的手法:
ランキング上位のサイトをみて傾向、特徴を掴む。
また、過去数年のランキングも参考に、デザインや評価の変遷を知る

●注意:
価値基準を作る時に、(制作)対象サイトを見すぎてしまわないようにする。そのサイトのルールが刷り込まれてしまい、ニュートラルな判断ができなくなるから。

2. 行動を想定する(自分が利用者になる)
区役所にどんな時に行くのか、実際に行く時にはどんな行動を取るのか、・・・。自分を1ターゲットとして捉え、自分が実際に使う時のことを考える。

●利用できるもの
実際に撮影した写真、Google画像検索した区役所や、フロアマップなどの画像など

●具体的手法:
できれば、実際に場所に行って写真を取りつつ、どういう行動を取っているかプロセスをたどってみる。できるだけ具体的に行動を洗い出すため、例えば「引っ越し手続き」などテーマを持って行う。

3. ユーザーのニーズを知る
想像できる一般的な行動プロセスだけでなく、ユーザーが区役所や自治体に対して想起するような事柄を知る。

●利用できるもの
各種コミュニティ(アスコエkizashimixiのコミュニティなど)

4. 行動プロセスの分析

プロセス、行動、要件を洗い出す。

●利用できるもの
AIDMA、AISASなどフレームワーク

5. 要件のマッピング
フローと情報構造は同じではないため、構造的な情報分類と、ユーザーが想起しやすい切り口の動線作りが必要。

●具体的手法:
グローバルレベルのメニュー名(カテゴリ)を抽出し、これ以上分解できないというところまで分解し、情報構造を理解し、再整理する。
想定した行動においてプライオリティが高いもの(例:引っ越しタスクではアクセスマップのプライオリティは高い)については相応の掲載方法をとる

といった感じでした。(うろ覚え・・)

情報設計ってリニアな思考プロセスってわけではないと思うので、短時間内でライブで見せることができるものなのか、すごく疑問だったのですが、なかなか興味深いトライだったのではないかと思います。(ライブIAに限らず、他の人がどう物事を考え、捉えているのかを知るのは興味深いです!)

全く予備知識のない業界のサイトを、どんな風に見ていったら良いか、といった時に参考にできる点がたくさんあると思いました。

ただ、「これが、情報アーキテクチャの設計です」というには、若干違和感を感じます。どちらかといえば、ディレクターや、もしかすると企業の担当者が、情報設計前に行うウォーミングアップみたいな位置づけに近いような・・・。

本来IAが行うべきは良いナビゲーションを作ることではなくて「問題解決」です。課題が何なのかを明確にするのが一番最初で、次に、解決するための方策を考え実施し、結果的にナビゲーション(なり、ラベルなり、構造なり)が、ターゲットユーザーにとって「良い」ものになるのかなと思っています。

一人ブレストするだけの時や、小規模でターゲットが明示的な場合は、自分を1ターゲットとして行動プロセスを考えてみるのは良いかと思いますが、実際の自治体サイトなど大規模なサイトの場合、多種多様なユーザーがいると思われ、また同じユーザーであっても、状況に応じて必要とされる機能や動線も全く変わってくると考えられるので、MECEに検討することと、優先順位の付け方とその根拠がキモだと思います。

HCD-Netの「地方自治体ホームページのユーザビリティ評価〜引っ越しタスク編〜」で評価を行った時も似たようなことを思った記憶があります。サイト内のページ単体の使い勝手の評価という意味では、ヒューリスティックによる、それこそ○×評価や、ベンチマークとの比較とかで良いかもしれません。

でも、本当の意味でユーザーにとって使いやすいか、分かりやすいかどうか、というのは、ペルソナを作ったからといって明確になるわけではなくて、また「引っ越しタスク」といった漠っとした目的に対して分かるものではなくて、ユーザーの一連の行動の中で、ユーザー自身も気づいていない「課題が何か」を知り、それが解決できているか、ということが指標になるのではないかしら。課題が不明なままだと、評価も設計もできないんじゃないのかなーと。

今回のライブIAという試みは、パフォーマンス的な面もあるし、サイト外施策は考えず、前提も緩く、というのが参加者全員の共通認識としてあったので、検討範囲がかなり限定的でも問題ないのかもと思いましたが、第二部のグループワークでのテーマ設定で悩んだ点や、そのHCD-Netのユーザビリティ評価の際に評価しきれないと思った理由に「課題が何か」の観点が欠落しているという共通項があるような気がして、後々の参考のために、超長いエントリーだけどポストしときます。

あ、ちなみに宣伝(?)ですが、WebSigのIA分科会は、IAAJ(Information Architecture Association Japan)の活動に引き継がれます。IAAJでは、毎月1回程度、できるだけ定期的にIA Cocktail Hourという懇親会や、その他勉強会/報告会などを開催しています。この会には、インフォメーションアーキテクトだけでなく、業務としてIA的なことを行っている人、IAに関心がある人など幅広く参加いただいていますので、ぜひ、参加してみてください。開催予告は、IAAJのサイトメーリングリストのほか、コンセントブログでも行いますー!

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