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IAとHCDとUXと旅とファッション

Posted in Design, Fashion, IA / UX / HCD / UI, Travel on 5月 11th, 2012 by chibirashka – Be the first to comment

[Summary]

I love fashion and travel. And in fact, I think I can call myself “extreme shopper” or “extreme traveler” in terms of how to buy/travel. In addition, I’ve been in web design industry and have some background of IA: Information Architecture; HCD: Human Centered Design; and UX: User Experience design.

Fashion tends to be told from culture and trend view, but clothes, shoes and other fashion items as fashion element are all products.

When I look at fashion and travel from a standpoint of IA/HCD/UX, I feel there are more what we can do, and it maybe business opportunity. IMO service design approach should be tapped into fashion and travel more.

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気づけば4月は一度もブログを書いていなかったんだ!Wow!

ブログを書いていない間にもほんとは色々あった。

ニューオーリンズで開催のIAサミットにも行ったし、ニューオーリンズではワニの剥製を買い、ワニを食べ、ワニを抱っこし、ワニ三昧の後はニューヨークにも行ったし、4月後半にはこれまで乗っていた(夫が)BMWにお別れして、半年待ちでようやくレンジローバーのVOGUE superchargedが納車され、そして車でワンコさん達を連れて北海道にも行ったりなど。

そういうようなこと1つ1つも書きたいのだけど、今日は「IAとHCDとUXと旅とファッション」というテーマで。

超久しぶりに書くブログのタイトルがとっても突飛。そして、書きたいことがありすぎてまとまりがないのに書き始めてしまうという無謀さ。

何を結論として言いたいのか、話の流れを考えてから書こうと思い始めて早何年って感じなんだけど、全くうまいことまとまらないので、とにかく考えていることの断片だけでもメモ的に書き連ねることにした。

なぜならば、私は今後、自分の興味がある方向にもっと舵を切っていきたいから。

その方向とは、旅とファッション。

舵を切りたいといっても、旅行業界やファッション業界に転職したいです、とかいう話でもない。(もちろん、人生何があるか分からないので、別にそういうことが起こってもいいかもしれない)

転職したいわけではないけど、旅とファッションの領域で作りたいと思っているサービスはある。企画は温めているものの、実現されたら便利なのに…と思う全体像はあまりに巨大すぎるので、ちょっと頑張ってなんとかなるものでもなさそう。

旅やファッション業界の経験がない私なんかに実現できそうもないなとも思うけど、イノベーションというのは業界外からのきっかけで起こることも少なくなかろうとも思うから、まぁ、そう考えれば何かは起こるのかもしれない。

という期待のもとに、旅とファッションについて考えていることなどをちょこちょこ書いていこうかなと思ったわけ。

業界経験のない私なんかが旅とファッションについて語っていいんだろうか、などと思ったりもしていたけど、「いや、いいはずだ」と思い直した。

なぜならば、まず第一に私はおそらく「エクストリームユーザー」あるいは「エクストリームトラベラー」「エクストリームショッパー」であるから。第二に私は少なからず、IA、HCD、UXという観点を持っているから。そういう観点で旅とかファッションを見てる人ってそんなに多いわけじゃないんじゃないかなーと思って。


エクストリームユーザー

エクストリームユーザーとは、ユーザー調査などでよく耳にする言葉だけれども、極端なユーザーのこと。ここでは用語を定義したいわけではなく、感覚的に使って書いてしまうので、正しい情報を知りたい人は検索してください。例えばこんな記事の中に出てきます。

消費者調査にエスノグラフィー手法を導入
「極端な消費者」に密着し普遍的な結論を得る

ピックアップキーワード:エクストリームユーザー

エクストリームトラベラー

ま、それはさておき、私がどのようにエクストリームかというと、旅行に関していえば私は多分旅行回数が多い方ではないかと思う。会社員として働いていて海外に頻繁に行くとしたら海外出張が多いのではないかと思うけど、私は海外出張というのは年に1-2回がせいぜいで、それ以外の旅行は基本プライベート。

最近は「弾丸海外旅行」「週末海外」といったキーワードもよく聞くから、実際には海外に頻繁に行く人は少なくないと思うけど、数だけではなく質の面でもおそらく私はエクストリームなのではないかしら。

出張だったらエコノミークラスも乗るけれどもプライベートで旅行するときはビジネスクラス、ファーストクラスが基本。ホテルに関しても1泊500-600ドルの部屋は普通、1泊1,500〜2,000ドルの部屋に泊まることも珍しくない。

「ご褒美旅行だから今回はビジネスなんだ♪ラグジュアリーホテルなんだ♪」っていうのとはちょっと違う。

また、芸能人や良家の子女的なセレブというわけでもないし、ホテル批評家とか国際線乗務員でもない、一般生活者なのにも関わらずこういう旅行をするというのがかなり特異なのではないかなと思う。


 エクストリームショッパー

ファッションに関しても多分エクストリーム。ファッションというとまた言葉が広いので、まぁ、わかりやすく絞ると洋服だの靴だのバッグだの、といった購買に関して。

私はファッション誌のエディターでもないし、ファッションブランドのプレス担当でもないし、スタイリストでもないし、もちろんモデルでもないけれども、ファッションは大好き。

だからといって、他者から「オシャレな人ねー」と認知されているわけでもないんじゃないかな。だから、ファッショニスタとかトレンドセッターとかに分類されるような一般人というわけでもないし、人前に出る機会がとても多い職種というわけでもない。

けれども、けっこう洋服とかファッション関連のものを買う。

この記事を書くために、ここ1年ほどに買ったファッション系アイテムを超ざっくり調べてみたら、トラッキングできる範囲で数えても100点あった(下着類は入っていない)。

1着5,000円のものもあれば、Chloe好きな私は1着が30万円を超えるものもあったりするので厳密に計算したわけじゃないけれども、約1年間に買った服関連だけで私の年収を超える。多分、中堅のWebディレクター(会社によってはプロデューサー)の年収ぐらいいくんじゃないだろうか。(って、今気付いてビビった)

旅行をする機会が多かったり、洋服を買う機会が多かったりするから、気づくことや言いたいことがいっぱいあるのだ。お金をたいして落としていないのにやたらとクレームをつける単なるクレーマーというのとは違う(と本人は思っている)し、モノを持っていないわけじゃないし買えないわけじゃないのにだからといって大満足というわけでもない。

だから、そういうエクストリームな私が考えていることを誰かに言うのは、もしかしたら少しは意味があるのかもしれないと思ったわけ。

さて、ここからはIA、HCD、UXの観点。
と書くとすごそうだけど、あまり大した話でもない。

話が長くなるのでとりあえず旅はおいといて、ファッション分野について。

ファッションとIA

ファッションの、ある一部分(側面)はIA的だと思う。キャミはintimates(下着)なのかトップスなのか、オールインワンはパンツに分類するのがいいのかオールインワンとしてカテゴリーを作るべきなのかといった分類の観点でも面白いし、組み合わせ(コーディネート)によって異なる意味が与えられるといったようなところが。あるいは、持っている洋服などのアイテムを可視化しようとしたときに、何のキーでソートできるのが最も便利かといった検索性とか。トップス、ボトムス、アウターといったカテゴリーが一般的だけど、実際には素材によって着れる時期が違っていたりするから、単にトップスが一覧化できても今日着れる1着かどうかの判断には情報が足りないとかね。

ま、そんなこと言ったら世の中の大半の事柄はIA的(情報構造とか考える対象として面白い粒度を持っている)って話になってしまうんだけど。

ファッションとHCD

そして、ファッションを構成する洋服や靴といったものはプロダクトなので製品を作るプロセスがあるという意味ではHCD観点でも考えられるはず。でも、実際には洋服や靴はプロダクトではあるんだけど、流行や文化の観点で語られることが圧倒的に多いと思う。

もちろん、アウトドア系の機能が要求されるような服というのもあって、モンベルなんかは社員の実際のアウトドア体験から得たことがプロダクト作りにフィードバックされていたりするわけだからそれはそれなんだけど、普通の服の場合、「このパンツは毎シーズン定番で出てるんだけど、◯◯っていう要望があったので今シーズンではこんな風になってて」とかいうフィードバックこそあれ、基本的には流行だったり、そのブランドのその年のコンセプトが反映されるのであって、ユーザー中心にデザインというわけではないことがほとんどなんじゃないかなー。

ついでに言うと服には取説がない。洗濯などのお手入れ情報とかはタグについていたりするけど、どう使ったらいいかといった説明書は洋服一つ一つにいちいちついてないよね。イマイチ考えがまとまってるわけじゃないから突っ込みどころが多いのは承知の上なのだけど、「プロダクトなのにうーん…かといって、人間中心で作って欲しいというもんでもないけど、だからといって、実は使いこなしていないんじゃないかって気がする、でも使いこなせないというのを製品(洋服)のせいにできる気もしない、デバイスのような製品とは違って。」というようなモヤモヤ感。

ファッションとUX

HCDのところで書いたモヤモヤ感ともつながるんだけど、使いこなせないということは満足度を下げると思うんだよね。ここで言う使いこなすというのは、超簡単に言えば、手持ちの洋服をどうコーディネートするか、みたいな話なんだけど、なぜそれが大事かというと、コーディネートによって周りに与える印象というのはとても変わるし、場合によってはその印象によって、他の人に自分がどう扱われるかまで変わるから。

また、もっと機能的な話もあって、ファッション的な意味でのコーディネートとしてはバッチリでも、突然の土砂降りには適していない格好であったがゆえにさんざんな思いをする、みたいなこともあり得る。

つまり、どのようなアイテム(素材の上質さや機能面などといった観点も含め)を、どのような状況で、どのように着こなすかによって、どのような体験が得られるかが全く変わるということなので、包括的な体験デザインのことにまで関係してくるなーと。

ファッションに関しては、洋服とか靴といったタンジブルなものがあるので「プロダクト」という観点もあるんだけど、実際には服単品でコト足りることはほとんどなく、必ず何かを組み合わせる「コーディネート」が必要で、そこはもう、デザイナーの手を離れたところなんだけど、実際にはそこからがユーザー体験の塊なのだからもっと色々できる余地があるだろうにと思うのよね。

話が長くなるからファッションに絞って書いたけど、旅に関しても同じようにIA的、HCD的、UX的っていうのは言えると思う。加えて旅の場合は「飛行機に乗る」「ホテルに泊まる」といった体験の積み重ねであって、わかりやすく手に取れるものではない(インタンジブル)ことが多いので「サービスデザイン」といった観点も。まぁ、洋服のコーディネート部分なんてインタンジブルだからそういう意味ではもっとサービスデザインを!ってことなのかもしれない。

…って、今日書きたかったのはもっと超具体的な、もっとライトな話のはずだったんだけど、なんか変な方向に話がいっちゃったな。ま、長すぎるから今日はここまで。

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私のIA/UX観

Posted in IA / UX / HCD / UI on 8月 29th, 2010 by chibirashka – 1 Comment

先日の「富裕層向けユーザーエクスペリエンス」に引き続き、大それたタイトルで書いてみる。

しかし思考がまとまっているわけでもなく、超個人的な備忘録って感じだけど。

私がIAやUXに興味を持った経緯は、2002-2006年頃までのディレクター時代の経験によるところが大きいわけだけど、その当時から現在のようにIAやUXということについて学んだり考えたりする機会に恵まれる今に至るまで、私の中で揺らぎなく思っていることがある。

それは、

「素晴らしいと納得できるIAやUXは、究極的には、自分でサービスを立ち上げることでしか実現できないのではないか」

ということ。

反対意見の方が多いんだろうなと思うけど、何年考えてみてもやっぱりそこの意見が変わることはない(少なくとも今のところ)。というか、正しいとか間違っている、とかではなく、私はIAやUXをそこまで拡大解釈して捉えていると思う。

IAというか特にUXについてかも。

IA設計やUX設計の時、ユーザーとコンテンツをどうつないであげるか、どんな体験をさせてあげたいか、そういうことを検討するけれど、もっと根本的なところで「継続性」というキーワードがあるのではないかと思って。

「見れていたものが見れなくなってしまう」とか「使えていたものが使えなくなってしまう」とか、それって著しくネガティブな印象を与えてしまうと思うから。

使い勝手だとか、「この世界観素敵だわ〜」というような印象とか、そういう一時的なことではなく、継続的にサービスが提供され続ける、ということが一番プリミティブなUXなのではないかと思う。企業で言うところのゴーイングコンサーンみたいなものか?

電化製品とかのプロダクトの場合、「そもそも壊れない」品質で世に出されるはずだし、ラインオフしたらほとんどのものは、アフターサービスを除いてはメーカーの手を離れてしまうと思うけど、仮に少々使い勝手が悪かったとしても、物理的に存在している以上、朝起きてみたらあったはずの電子レンジがなくなっていたなんてことは基本的にありえない(盗まれたとか、テレポートできちゃった、とかじゃない限り)。少なくとも、プロダクトが「こちら側」にあるので、ある日突然そのプロダクトが消失してしまうとしても、それはユーザー側の責任で済ませられる。「レンジがなくなったのは製造元のA社が悪いのだ。A社なんて大っきらいだ!」とはならないはず。

でも、Webサービスとか何か「仕組み」を提供している場合は、使っているのはユーザーで、操作しているのは「こちら側」だけど、操作している対象は「あちら側」にある。バグのない品質担保された状態でリリースされても「こちら側」に所有できるわけではない。ある日突然(事前告知されるとしてもだ)そのサービスや「仕組み」が消失してしまうとしたら、それは「あちら側」の都合であって、ユーザーの責任ではないので「こんなサービス大っきらい!」となってしまうんじゃないだろうか。何か記録を残したりするアーカイブ性の高いものだと特に。

となると、そもそも、サービスや「仕組み」が消失してしまわないような事業モデルが作れることや、維持・拡大していくための営業力、将来を予測しながら攻めていくための財務戦略、チームビルディングのための組織マネジメントが大事かつ、そこに責任を持つところまで必要なんじゃないかと思うわけ。(すごい飛躍した結論に聞こえるかもしれないけど)

仮説を立てたりコンサルするだけじゃダメで、営業に行き、売上を自ら立て、チームの士気を上げ、ファイナンスもやる、そこまで全部。

「こんなユーザーが、こんな状況で、こんな機能を、こんな体験と共に、こんなフローで使える」といったシナリオや、それに基づいた実装は、ほんとに表面的な皮膚みたいなもんで、そもそも体全体を維持することの方が大事なんじゃないのかなーと。

ま、表面的な皮膚のところをどうするかさえ難しいんだから果てしない話だけど。

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富裕層向けユーザーエクスペリエンス

Posted in IA / UX / HCD / UI on 8月 18th, 2010 by chibirashka – 2 Comments

最近の私の関心事の一つとして「富裕層向けユーザーエクスペリエンス」というのがある。
仰々しく書いてしまったけど、富裕層向けのサービスはどのように設計されるのか、誰が設計できるのか、なにをもって良い体験といえるのか、というようなこと。

なぜ最近そのことが気になるかというと、自分の身の回りのサービスがいわゆる「富裕層向け」「エグゼクティブ向け」っぽいものが多いことに気づいたから。だからといって、「チビラーシカ=富裕層」とか「チビラーシカ=セレブ」とは限らないところが味噌なんだけど(謎)

そもそも世の中一般的に富裕層っていうのは誰なのか?Wikipediaによると、

富裕層(ふゆうそう)とは、セグメンテーションのひとつであり、一定以上の経済力や購買力を有する世帯を指し示す。
世帯年収2,000万円から3,000万円以上、金融資産1億円以上などとして定義されることが多い
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%8C%E8%A3%95%E5%B1%A4

だそうだ。

ボストンコンサルティンググループの「Global Wealth Report」では「金融資産100万ドル以上を保有する富裕層は…」と書かれているので、日本だけでなく海外でも、富裕層の定義はやはり金融資産でざっくり1億円と考えて良さそう。

私は我が家の世帯年収や金融資産がどれぐらいあるのか、全く知らないので(夫任せなダメ妻ゆえ)、我が家がこれに当てはまるのかは知らないけど、わりと好き勝手にやらせてもらっているところを見ると、年収1,000万ではないんだろうな、という感覚は持っている。

(あちこちから石が飛んできそうではあるけど、無謀を承知で言えば)実際、年収1,000万程度じゃたいしたことできないよな〜、となんとなく思うし。

でも、なんとなく日本だと、年収1,000万っていうのが一つのラインとしてあるような気がするし、下手すると、その年収程度の人を想定した「富裕層」サービスというものがありそうな気がするな。

一応の定義はあっても「富裕層」っていうのが曖昧で、セレブに憧れて、それっぽい雰囲気を醸しだしている人たちをも、便宜上なのか揶揄的になのか「セレブ」と呼んでしまう、そういうのに似ていると思う。

対象の定義が曖昧ゆえ、そこに提供するものがどうあるべきか、ということを考えるのも無謀なんだけど、とりあえず私の身の回りにあるも「多分、これって一応富裕層(的な人)向けなんだろうな」と思うメンバーシップを挙げると

  • 六本木ヒルズコミュニティパスポートPREMIUM PASSPORT
  • CLUB ON PLATINUM(西武)
  • The Leaders Club(ラグジュアリーホテルのメンバーシップ?)
  • CLASS ONE(HISエグゼクティブセクション)

とかとか。

挙げてはみたけど、まぁ、見て分かる通り、基本的にはどれもこれも庶民的なものばかり。
こんなメンバーシップカードを気にしていることそのものが富裕層ではない、と私は思う。
上記の中で最も腑に落ちないのが、CLASS ONE。ほんとの富裕層なんてHISではチケットを買わないのだよ、と思う。

私自身は貧乏性だし、一般市民なので、つい「わーい!ポイント貯まってラッキー♪」「同じビジネスクラスなら、多少安くチケット取れた方がお得じゃん!」と思うクチなんだけど、例えばうちの夫などは、今でこそ私に教育されたために、うまくクレジットカードを使い、マイレージも気にするようになったけど、私と出会った頃は、航空会社のマイレージサービスにも入らずに、乗るのはいつもファーストクラスという人だった。車購入もニコニコ現金主義で一括でボーン、みたいな。
こういう人が本来富裕層と分類されるべきと思うけど、そういう人って別に細かなサービスとか気にしていないから、富裕層向けのサービスが響くのか謎だ。となると、企業が「富裕層向け」と謳っているサービスの大半は、実は「富裕層」向けではなく「富裕層っぽく”見える”人」「私って富裕層かもと思っている人」「気づかず富裕層の恩恵をあずかってるだけの人」向けでしかないのではないだろうか。

ちょっと話は変わって、今度はある商業施設のフィールド調査の報告会で上がってきたポイントについて。
「フロアマップとかサイン表示が分かりにくく、人がいない閑散としたエリアができてしまったり、建物全体が分かりにくい印象になってしまっている。これはユーザーエクスペリエンスを低下させてしまうので、ビジネス機会の損失になるのではないか。」というものだった。
聞いているときは、「全くそのとおりだ!」と激しく同意したのだけど、ふと道を歩きながらもう一度そのことについて考えてみた。

ほんとにビジネス機会を損失しているんだろうか?

例えば、その商業施設は我が家でも利用するのだけど、なぜ利用するかといえば「すいてるから」「比較的子どもや赤ちゃんが少なくてうるさくないから」「好きな店があるから」であって、そこのメンバーシップを持っているから、という理由は限りなく利用動機の下の方にある。その商業施設が特別好きなわけではないけど、気に入ったものがあれば、通りがかりに100万以上の買い物をすることもある。(この施設に限らず、我が家が好んで利用している施設にはどれもこの共通点がある気がする)

もし、フロアマップとサイン計画を見直し、とても分かりやすい施設になって、来場客が増えた結果、店内がごちゃごちゃするようになったら、確かに閑散としたエリアは減るかもしれないし、そうした人達が1-2万の買い物をするかもしれないけど、100万の買い物をする私達は多分そのお店には行かなくなる。

どちらがビジネス機会を損失するんだろう。もちろん、1-2万の買い物しかしなくてもそういうお客さんが100倍に増えれば、1回で100万使うお客さんを抱えるより繁盛するので、どういう性格の施設でありたいか、という方針次第なだけだけど。

しかもこれって、「富裕層」がどうか、ってことでもなく「子どもがいない我が家のような夫婦の場合」ってことなので、限りなくニッチだと思うし、仮に我が家に子どもができた場合は「ベビーカーがスムーズに進めないなんてけしからん!」とか言ってるかもしれないので、置かれた状況次第なんだけどさ。

またまた話は変わって、先日軽井沢・星のやに宿泊した。これは別記事を書こうと思うので、サラーッとだけここで書くと、確かに素敵なところで、行ってよかった!と思うけれども、「(すごい、良いとは)言っても、こんなもんか」というのが正直なところだった。何かがダメだったわけじゃなく(厳密に言えば、ダメなポイントはいくつかあるけど)、全てが想定範囲内だった。

星のやといい、洞爺湖ウィンザーホテルといい、レセプションエリアでのウェルカムドリンク、という時間が「あなた達特別です」感を演出してるだけでしかなく表面的で、上質なサービスを体験したことがない人が企画してるんじゃないだろうか?と感じてしまうのよね。

もはやテーマが「富裕層向けUXとは」から「河内家的に嬉しいサービスとは」にずれてしまってるけど、要は

  • めんどくさくない
  • うざくない
  • 待たせない

というのが必須要素。これは、「このサービス、ナイス!」って思う要素というよりは、「このサービス、まぁ、悪くないね」に達するための最低要件であって、これが「ナイス!」の評価になるためには、プラスαが必要。

例えば先に挙げた六本木ヒルズコミュニティパスポートPREMIUM PASSPORTでいえば、確か駐車場無料といった特典があるけど、駐車場無料なんかじゃなく、エクスクルーシブなvalet parkingを有料で提供してくれた方がうれしいし、西武のCLUB ON PLATINUMで言えば、専属外商担当がついてバシバシ電話くれたり、専用ラウンジでお茶出してくれるよりも、パラパラ各お店から来るハガキをまとめて一括でファイリングして送ってくれる方がよかったり、ホテルでいえば、パブリックなレセプションエリアでウェルカムしてくれるより、さっさとお部屋に通してくれてそこでチェックインさせてくれた方がよっぽど嬉しい。とかとか。

しかし、私が

  • めんどくさくない
  • うざくない
  • 待たせない

を挙げる理由は、「私がそうであって欲しいと思っているから」というよりも、この要素全てが夫の機嫌の維持に影響するからである。

夫と一緒にどこかに行ったりするときには、そこで見聞き、感じることを共有して、楽しく過ごしたいし、そのためには夫が不機嫌になると困る。機嫌がよくサービスを受け、またその提供されるサービスを夫が気に入った場合には、永続的な利用が見込めるので、結果的に私も永続的にそれを一緒に利用できるのでメリットがある、ということ。

デザイナーやプランナーは自分以外の誰かのためにデザインする時、そのインサイトを深く知るためにユーザー調査を行ない、得られた結果をデザインに利用できるようモデリングを行うと思うんだけど、我が家のようなユーザーの場合、あまりにも意思決定のパラメーターが多すぎて、そして場当たり的なので、モデル化できないんじゃないかと、ふと心配になってしまう。

心配というか、我が家でさえそうなんだから、金銭的な制約事項がない(可能性の高い)富裕層の場合、意思決定の際に、より強く影響を及ぼす外部要因というのが多く、また想定外なものが多い気がして、だからこそ、そういう層向けのサービス設計やユーザーエクスペリエンスデザインができるのは誰なのかな?と最近興味を持っている。

—–追記(8/19/2010)—–

ある方から、日本の富裕層のほとんどは、地方在住で土地を持ち、駐車場やアパートを経営している団塊世代で、日本の富裕層向けサービスの多くはそこに設定されている、と教えていただきました。都会でお金をどんどん使う富裕層というのは少数派で、そこへのサービスはまだ少ないようです。

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