医神アスクレピオスの神域、Epidavros(エピダヴロス)遺跡へ
前日のFranchthi CaveやHydra(イドラ島)に引き続き、9月23日もエクスカージョンへ。
この日のスタートは、Epidavros(エピダウロス)遺跡。
終日、車はBMW、ドライバーはYiannis(ヤニス)さん。車内にはWifiもある。
そしてこの日は、アテネから日本語が話せるギリシャ人ガイド、Korina(コリーナ)さんも呼んでいて、エピダヴロスの入り口で落ち合った。
エピダヴロスは、医療施設、精神病院、劇場、体育施設などが集まった総合ヒーリング施設といった感じで、紀元前5〜6世紀頃からローマ時代の終わり紀元後4.5世紀頃まで続いたらしい。
ここは、医神アスクレピオス(Asklepios)の神域とされているのだが、アスクレピオスはアポロ神と人間女の間に生まれた子どもということになっている。アスクレピオスのシンボルは蛇。蛇は亡くなった人の世界にも生きてるし、人の世界にも生きてる。その二つは蛇によってコミュニケーションできるとされている。
蛇の毒はギリシャ語で「ファラマーキ」言われているそうだが、薬局を表す言葉が「ファルマシー」(英語:Pharmacy)なのは興味深い。アスクレピオスと蛇からきているんだろうか。
考古学博物館
まずは考古学博物館を見学。
入るとすぐに、ガラスケースに展示された医療器具が目につく。
紀元前5世紀にはこうした器具を使って手術もしていたという。また、発掘された人骨などからは、頭に穴をあけて脳外科手術なども行い、頭蓋骨に蓋をして、その患者はきちんとよくなり、その後別の病気で亡くなるまで元気に過ごしていたということもわかっているそうだ。
病気の人は家族とともにこの施設にやってきて、家族とともに数ヶ月を一緒に過ごしたらしい。そして、手術のような処置だけでなく、マッサージであったり、運動だったり、そういうケアなどを受けていたとのこと。
家族も一緒にというのが面白い。今でもギリシャでは家族の結束が強いというか、協力しあう文化が根強く、例えば介護が必要な親などがいても、ケアホームに入れたりせず自分達でちゃんと世話をするのだそうだ(そういった施設に入れることは家族の恥といった感覚があるらしい)。
碑文には、どんな病気だったかなどが書いてある。
ちなみにギリシャ人であれば、おおよそこういった碑文に書かれた昔の文字を読めるそう。
2500年前ぐらいの文章であれば50%ほど、紀元前2世紀頃のギリシャ語であれば100%理解できるのだそう。
それは使われている文字が同じで(フェニキア人の文字?)、文法が少し違うだけだからなんだって。
ほかにも、この考古学博物館には、医療施設に関する資料だけでなく、柱や像など発掘されたものも色々展示されている。柱を見ながら建築様式についても教えてもらう。
- ドーリア様式:飾りがなく無骨で固く冷たい感じ
- イオニア様式:羊の角のモチーフが使われたエレガントな雰囲気
- コリント様式:アカンサスの葉が描かれ装飾的(ローマ時代に使われた)
ちなみに、スパルタはドーリア人で、「スパルタ教育」といった言葉から想像されるイメージとドーリア様式の固い厳しい感じには通じるものがある。
アテネ人はイオニア人。(だからか知らないけど、後日見学することになる、アテネの国立考古学博物館の柱はイオニア様式である)
このエピダヴロスの博物館には、羊の角とアカンサスの葉の両方を用いた柱もあって、それはイオニア様式とコリント様式のコンビネーション。
銅像も面白い。
よくみると首の部分は付け替え可能になっている。
ローマ時代、神官や皇帝は自分の銅像を何百、何千と、神殿などあちこちに飾ったらしいのだが、神官や皇帝が変わる度に、全部を変えなくてはいけない。全身を全部作り直すと大変な労力がかかるし、めんどくさい。「体型は大体みんな一緒だし」ってことで、頭だけ付け替え可能な仕様で銅像を作ったのだとか。なんだそりゃ。
古代劇場(Ancient Theatre)
さて、エピダヴロス遺跡といえば一番の見どころはおそらく古代劇場。
12,000人を収容できる劇場で、ほぼ原型をとどめている。
バッカス神への崇拝のために春と秋のバッカスの祭りのときにだけ劇が上演されたらしい。
当時の演者は3名で、いずれも男性だったとのこと。
ちなみに、市民が税金を払うようになったのは紀元前2世紀からのことで、それまでは、こうした建造物を作ったり維持したりするための費用を負担していたのは、いろんな街の外国人やお金持ちだったそうで、当時、こうした劇を上演するにあたっては、お金持ちがスポンサーとなっていたらしい。
お金持ちとしての威厳を示したり後世に名を残すためにスポンサーとなったようで、劇場の周りにはスポンサーの像が建てられたりしている。また、劇のコンテストなどがあると(アカデミー賞的な何かか?)、そこでの勝者というのは演者ではなくスポンサーなのだそう。
ここの音響効果は大変素晴らしいと言われているのだが、ポイントが3つ。
- 丘の自然の形を利用していること
- 材料に石を使っていること
- 満席になってはじめてベストな音響効果が得られるということ
不思議だ。
それにしても、紀元前4世紀のものとは思えないほど、きれいな状態で保存されている。
ステージの真ん中では、観光客達が、それぞれに手を叩いて音響効果がどんなかを確かめていた。
そして、犬猫が多いのは、こちらも同じで、我が物顔で野良犬たちが、この劇場の階段を行ったり来たり、走り回っていて楽しそう。
ちなみに、ここの遺跡には、アスクレピオスの神殿もあるんだけど、土台しか残っていないので、見てもそんなに面白いわけではない。
このあとは、車で移動してミケーネ遺跡へ。