UXDの10の誤解

大企業でもない限り、肩書きに何を名乗るかは比較的自由で、ある意味、名乗っちゃったもん勝ちなところがあると思う。

でも、同じ肩書きを名乗るとしても、それが指す範囲は名乗る側(組織)によっても違うし、その言葉を聞いた受け手によっても違う。
あ、ここで「肩書き」と言っているのは、課長、部長、主査、といった職位ではなく、職能のことね。

特にWeb業界の場合は、業界自体が比較的新しいし、進歩する技術によって初めて実現される事柄が出てきたり、何かと何かの関係性が新しく生まれたり、ということが多いので、新技術の名前だけでなく、それに対応できる人の能力や職種を表す言葉もどんどん生まれているような気がする。

そんなに新しいってわけでもないけど、「Information Architect」っていうのもそうだろうし、日本特有の「Web Director」というのもそうだろうし。最近だと(私にとっては)、「Interaction Designer」とか。もう1つおまけに「User Experience Designer」とか。

User Experience Designって、直訳で「ユーザー経験をデザインする人」なので、相当意味が広い。じゃー、全部じゃん!魔法使いか!?とか思う。かといって、「物事を、使いやすく、分かりやすく、使い心地よくする人」って言うと、それはそれでシンプルすぎじゃん?って気もするし。

というわけで、そんなことを考えてるのは私だけじゃないようで、こんな記事を発見。

10 Most Common Misconceptions About User Experience Design
〜ユーザーエクスペリエンスデザインに関するよくある10の誤解〜

Whitney Hessという人が書いた記事だけど、彼女はこの記事を書くにあたり、Peter MerholzDan SafferDan BrownLouis RosenfeldLuke Wroblewskiなどなど、たくさんの人たちにTwitter DMを打って、ヒアリングした上でアイディアをまとめているので、彼女の思い込みだけで創作されたものではなく、UXD周りにいる、多くの人たちのコメントの引用で構成された興味深い記事となっています。

ちなみに、10個の誤解はこれ。


User experience design is NOT:ユーザーエクスペリエンスデザインは・・・

1. user interface design:ユーザーインターフェースではない
UIはUXの構成要素だが、パズルの1ピースでしかない。

2. a step in the process:プロセスの中の1ステップではない
UXDは、ユーザーの振る舞いに対応し進化させていく継続的なプロセスである。

3. about technology:テクノロジーのことでもない
人々の目的の達成を助けるためにテクノロジーは使うものであって、あくまで本来の意図は、すごいテクノロジーを作ることじゃなく、人々を助けること。

4. just about usability:ユーザビリティだけでもない

モノ(コト)を簡単に直感的にするだけじゃ不十分で、人々に態度や反応を変えさせるため、彼らが使いたくなるようなモノ(コト)を作る必要がある。

5. just about the user:ユーザーのことだけ見てればいいってもんでもない
そこには必ずビジネスの目的があるのであって、必ずしもユーザーのみにベストな判断ができるわけではない。ブランドのことも考えつつユーザーニーズとビジネスゴールの間のちょうどいい塩梅を見つけることが大事。

6. expensive:高くない
フルフルのUCDのプロセス、ペルソナやユーザーリサーチといった手法に執着しがちで、そうすると、コストも高くついて、永遠に時間がかかりそうに見えるけど、実際にはプロジェクトごとにそれにあったメソッドを取り入れ、いくつかのUXDテクニックを導入し小さく改善するという方法を取ることで、あらゆる制約の中でもカスタムメイドのアプローチを取ることができる。

7. easy:簡単じゃない
クールで効果的と思われる取り組みの実施方法は知ってても、その全体のプロセスがそんなに簡単でないことも分かってるし、また別の難しさとしてよくありがちなのが、自分たち自身をエンドユーザーだと思い込んでしまうという罠。

8. the role of one person or department:誰か1人とかどこか1つの部門の役割ではない
UXDは連絡窓口な存在であって、特定の主題に特化した専門家でもなければ、医者でもないし、マジカルな存在でもない。聞き方に長けているというスキルを生かして、組織の中で、最も効果的なプロセスについて説くことを助けることはできるけど、ビジネスが成功するかどうかは、結局はそこに関わる全メンバー次第である。

9. a single discipline:1つの専門領域ではない
UXDはまだかなり新しいので、専門領域としてちゃんと確立していない。せいぜい、いいデザインを気にしている異なった専門領域の人々をつないでいる、認識程度のもの。必要な何か全てを遂行するために、UXDの領域にありとあらゆる専門性を期待しちゃだめ。

10. a choice:選択できる問題ではない
ダメダメなデザインを最初からゴールとして設定するわけがないので、自分たちが提供してるものが低品質で不完全だなんてことは信じたくないのが普通。(UXDを意識的に排除したわけじゃなくても、実際にはいいユーザーを体験を与えていないデザインが多い、っていう含蓄かね?)

しかし、やはりユーザー経験をデザインすることは、ありとあらゆる要素が絡むことなので、User Experience Design is not… という排他的な言い方はできても、User Experience Design is…と、宣言的な言い方は難しそうですね。

UXDの皆さんは、これ読んで共感するのかしら、どうなのかしら。ぜひ教えて欲しいとこです。このエントリーへのコメントを見る限りだと、賛同者が多いようだけど、日本でも同じ反応なのかな。

※私の訳は、超ざっくりすぎて、誤解とかありそうなので、原文を読んでください。

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6 Comments

  1. yuu より:

    UXDていうのは上級職なのだと思います。たとえばIAの上とか。
    弊社[何処]の場合はADが最強[謎]ですが、AD後のパスとしてUXDというのは全然アリでしょうし。いずれにしても、UXDいうからには、いわゆるデザイナーとしての末端職能といいますか、グラフィックデザインやモーションデザインやインタラクションデザインや、そういったことは前提として出来ている必要があるように思います。

    長谷川くん[誰]がProject Architectとかいってますが、僕的にはプロジェクトリーダーはいうなればProject Designerだと思っていて、話の狙いどころは同じなんだけどArchitectとDesignerという違いがあって、まあこれは会社文化の差なのでしょうね。

    長谷川くん[誰]といえば、前に職能マップ[謎]つくろうよとか話してたけど、ぜんぜん進んでないので、今年こそつくりたいのでつくりましょう、と、伝えておいてもらえますか?[謎]

  2. chibirashka より:

    yuuさん、こんにちは。

    私もUXDはIAより上位概念と思ってますが、完全な包含関係にはないような気がしてます。UXの方がユーザー寄り、IAの方がビジネス寄りみたいなイメージを持ってます。(って、IAIかHCDかTCか、なんかその手のカンファレンスかなんかで、そんなようなマップを見た事があるような・・)

    そう考えると、もう少しこういう方面の知識を入れないとな・・と思えて来た・・・(謎)

    そういえば、職能マップの話ありましたねー。けど、それを直接の現場の(?)デザイン会社仕切りでやってしまうと、ちょっとビミョーじゃね?みたいな話じゃなかったでしたっけ?メディアの方を巻き込んで・・みたいな感じで。。
    ともかくボスに伝えておきまーす!

  3. mayu より:

    mayu@しっとりシフォンケーキ使い です。
    そんなこんなもありつつ。
    要は真摯なコーディングをしていれば問題解決すること多い気がするのです。
    HTMLでもC++でもなんでも。

  4. tazuke より:

    この「UXDは・・・でない10箇条」には共感しますね。
    私はUser Experience Designerを極めてシンプルに「モノやコトの使い心地をよくする人」だと考えます。
    UXDは様々なものを結びつけて、新しい関係性をつくりだす編集に似ているのかも知れません。その対象はUIなど些細な一部でしかなく、効率や美学、お金の話、はたまた哲学まで多岐にわたっているのです。
    ひとりで閉じていては実現できない総合力だけにそう簡単じゃないことだけは確かでしょう。

    また、誤解を恐れず敢えて言いますと、使い心地を良くするためには、99.9%の地道な努力と経験に裏打ちされたプロフェッショナルスキルに加えて、0.1%の『魔法』が必要だと思います。

  5. chibirashka より:

    >mayuさん
    お元気ですか???色々写真見せて頂いています!毎日きっと新鮮ですね!!
    確かに、Webとかブラウズされた上で使われるようなものは、コーディングレベルでしっかりしてれば、けっこう解決できること多いのかもしれないですね。

    >tazukeさん
    美学や哲学までとは本当に広い!4のnot just about usabilityの延長で、使い勝手云々だけじゃなく、使いたいと思えるようなキモチにさせることや、その背景まで含めてってことですね、きっと。
    あと、0.1%の『魔法』は私もそうだと思います。松岡正剛さんの「知の編集工学」という本の中の、六十四編集技法の一覧の後で、「わたしは『創造』とか『クリエイティビティ』という言葉をあまり信用していない」というようなことが書いてあって、それを読んだ時に、確かに、64種類というこれだけの編集手法に含まれない何かなんてないんじゃないかと思いつつも、そんなに型にはめた種類の中のことしかないなんて!と、ちょっと腑に落ちなかったというか残念なキモチになったのを思い出しました。0.1%の魔法=クリエイティビティというわけでもないでしょうし、松岡正剛さんが、そういう風に語った文脈は、私が勝手に残念だと解釈した背景とも違うかもしれないですけど、0.1%の魔法はあって欲しい、というような気がします。

  6. DSLR-A850 より:

    完璧な設計のおかげで

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