UPA2009@Portland報告会

3657575138_989bf6eb4b

今日は、UPA 2009 International Conferenceの報告会(HCD-Net主催)に行ってきました。

UPA はUsability Professionals’ Associationのことで、ユーザビリティやユーザー中心設計の知識体系を整えていくようなこととか、Human Centered Designの観点から、ユーザビリティの専門家達を支援する活動をしている組織。私も会員登録している(今のところは活動してないけど)。

UPA 2009は、そのUPAのアニュアルカンファレンスで、今年は6月8日〜12日までオレゴン州ポートランドで開催。前々からサイボウズやカレンダーに登録はしておいたものの、(ビビリぃなので)イマイチ踏み切れず、私はポートランドにはいけなかったので、せめて、報告会でも行こう!と思って、会場のミツエーリンクスさんへ。

報告会のアジェンダは、

  • UPA2009の概要説明(HCD-Net国際事業部の金山豊浩さん)
  • Beginner視点で見たUPA2009(ミツエーリンクス Reva Glassmanさん)
  • 参加したプレゼンからのいくつかのトピックス(サイバーエージェント大塚敏章さん)
  • スペシャルイベントについてのお知らせ

という感じ。

【HCD-Net 金山さんの報告】

UPA2009には21カ国から550名の出席があったとのことだけど、去年の出席者は800名だったということなので、IA Summitもそうだけど、景気の影響で随分減っている。でも、カンファレンスのプログラム自体は、77のチュートリアル(講義型)、54のワークショップ、103のセッション(プレゼンテーションとか)、その他Posterや展示などと、かなり充実していたよう。

ユーザビリティのプロフェッショナルが多く集まるカンファレンスということもあり、ホスピタリティも随所に感じられるものだったらしい。IA Summitでも見られたメンターブースのようなものや、Jobボードなどはもちろんのこと、カンファレンスでせっかくポートランドに来た人達のために、観光スポットやレストランなんかを紹介してくれるような「UPA Hospitality」というブースもあったとのこと。

また、新しくUPAに入った人や、今回初めてカンファレンスに参加する人にもとてもWelcomeなムードが漂っていたそうで、New Peopleのネームホルダーにはピンク色のステッカー(逆にスピーカーなんかはブルーのステッカー)が貼られて、親しく声をかけてもらえるような仕組みもあったとか。

また同時に、配布されるカンファレンスプログラムの中で、初心者向けのセッションは色分けされていて、どれを受講したらいいか分かりやすくなっているということと、その初心者セッションを受講するとスタンプラリー式にスタンプがもらえ、いくつか揃うとユーザビリティについての基礎知識を持った人と認定されるような「Usability Fundamentals Programs」というのもあったということで、ユーザビリティの大切さの認知が高まるにつれ、エキスパートの育成や認定といったことへの取り組みも進んでいるようだった。

※日本では、5月に内閣官房IT担当室から「電子政府ユーザビリティ・ガイドライン(案)」が公開されて、その中で、ユーザビリティの専門家の参加の必要性が書かれているので、スタンプラリーかどうかは別としてw、こうしたエキスパートの育成や認定への取り組みは今以上に必要になりそう。(⇒長谷川さんのブログの「HCD-Netシンポジウムと電子政府ユーザビリティガイドライン」という記事に詳しく書いてあります)

【ミツエーリンクス Revaさんの報告】

今日の発表者の1人のRevaさんは、ユーザビリティ分野に関しては全くの素人という立場でUPA 2009に参加されたそう。新人にとってUPAが有益である理由として、

1. to meet people
世界中から多くの人が集まるカンファレンスなので、1カ所でポテンシャルビジネスパートナーから、競合から、現時点で取引しているような人たちから、自分がやりたいと思っていることをやっているような人たち、ヤコブ・ニールセンなどユーザビリティ分野のスターまで、さまざまな人にたくさん会える

2. to learn
変な独自解釈をしてしまったり、bad habitが身に付いてしまう前に、専門家からベストプラクティスのような知識を得ることができる。特に、具体的な例や情報を聞けるのも、実践者からの話であるからこそ。ボキャブラリーやリソースに関する情報も豊富で、どのようにしたらもっと学べるか、どんな言葉がどう使われるか、といったことも分かる。

3. to be inspired
この分野のスターたちに会えたり、500名もの人たちが自分と同じようにユーザビリティにコミットしていると知るのが誇らしく感じられる。

4. to find a job
いわずもがな

といったことを挙げていた。

その他、彼女が取った、CUE(Comparative Usability Evaluation)に関するものやなぜフィールドワークが大事か、といったセッションについての話もあったけど、かなり駆け足。特にCUEの方は、「ヒューリスティックは99% badでsuck(無価値で最悪)である」と主張している人による、ユーザビリティテストやヒューリスティックにおける問題点とかって話っぽかったので、もう少し聞いてみたかった。

Revaさんのプレゼンテーションは英語でした。

【サイバーエージェント 大塚さんの報告】

ユーザビリティやUXの必要性を業務上感じていて、比較的最近UPAを見つけて入会し、UPA2009に早速行ってみた、という方。アメブロのUI設計をしている部門のマネージャー。いわゆるWeb業界の制作側とか、ユーザビリティに感度の高いプロダクトメーカーではなく、サービス提供事業者の方がこうした分野に入ってこられているのは、とても興味深い。

「UXとは何か」を取り上げた、Jared SpoolのKeynoteについては、

  • UX≠Usability
  • ユーザビリティだけ考えてるんじゃ、取り残される
  • 例えばAppleで言えば、アップルストア自体やスタッフの対応も、アップル製品を使っているのと同じような感覚、体験を提供できているかどうか、ということがUXを実現できているかということである
  • sustainable(長く使えることの大事さ)というのもポイント

というようなことを紹介してくれた。また、Jaredからの3つの質問ということで、こんなチェックリストの紹介もあった。

あなたの会社のUXヘルスチェック

・Vision
チーム全員が自社のデザインが5年後どう使われているか説明できるか?
※UXってある程度長期的視点で実現されるべきなので、5年。

・Feedback
最近6週間いないに、自社または他社のデザインの利用を2時間以上かけて観察したことがあるか?

・Culture
最近6週間以内に、デザイン上の失敗を見つけたメンバーに報酬を与えたか?
※問題を発見できる人材を発掘、育てることが大事。

自問してみましょうww

その後の、Nathan Shedroffの「どうやってUXをデザイン戦略に落とし込むか」というセッションの話では、

Experiences are designable(エクスペリエンスはデザイン可能である)とし、エクスペリエンスには5段階のステージがあることを紹介。

  1. MEANING:意味(価値観やアイデンティティが利用者にどんな意味があるか)
  2. VALUES:価値観/アイデンティティ(どういう自分になっていけるかとか)
  3. EMOTIONS:感情(使用感についての感情とか。感情は一定してるわけじゃないから、↑のアイデンティティが大事。)
  4. PRICE:価格(価値観になり得る。価格帯が高いことに意味があるとか)
  5. FEATURE:機能面

また、エクスペリエンスの意味として、15個のコア属性が挙げられた。例えば、Accomplishment, Creation, Beauty, Community, Harmony, Oneness, Freedomなど。提供するエクスペリエンスが15個全部を満たす必要があるということではなく、ブランドやサービスによって特徴となる属性は異っていて良い。(AppleだったらCreation,  Community, Freedom。ディズニーだったらWonderとホニャララとか)

また、ブランド間でコア属性が異なるという話と同時に、Corporateとしての意味、Teamとしての意味、Customerとしての意味、といった三者間でもそれぞれにコア属性はあるもので、それぞれが持つコア属性のうち、重なる部分が特に優先されフォーカスされるべき属性であり、そういったことを考えるのが戦略的デザインだ、というような話だった(と思う)。ここももうちょっと聞きたかったな。

ほかにも、ゲームデザインにおけるユーザビリティテストの話とか、Yahoo! GO(モバルサイト)におけるモバイルのユーザビリティ手法といった話が駆け足で紹介された。

うーん、なんでしょう。正直言って、UPAの会員であるものの、UPAとIA Summitってどう違うんだろう、というようなのがあんまり分からなかったんだけど(UPAはユーザビリティで、IA SummitはIAで、共通項としては多分UXがあって、というのはおいといて)、感覚的に今日思ったのは、IA Summitの方がより概念的で、UPAの方は具体的な調査手法など実践的かなということ。もっと穿った見方をすると、IA SummitというかIAの方は、ユーザーなり情報なりを類型化するといった意味で、ユーザー1人1人というよりはもっと俯瞰して全体を見てる感じで、UPAというかユーザビリティの方は、ユーザー1人1人をよく見ているという印象。あー、そうやって書くと、なんかちょっと語弊があるな。うまく説明できないけど、そんな感じ。

UPAカンファレンスで得られるものが、具体的にイメージわかなかくて、IA Summitとの差とかもあんまり腑に落ちてなかったから、今回ポートランドに行こう!絶対行ってやるー!とまでは思えなかったんだけど、なんとなく、IA SummitとUPAの使いわけ(?)というのが分かったので、来年はちょっと行ってみたいかも、と思った。

ちなみに2010年は「Embracing Cultural Diversity -UXD for the world-」というテーマで、ドイツのミュンヘンにて開催されるんだって。テーマも面白そう。うーん、でもなー、どうせ行くなら、何か発表とかしてこないともったいないし、そう思うと、なかなかハードルも高いから、行けるかどうかはビミョー(やっぱりビビリぃ♪)。

Share

3 Comments

  1. tsukamotch より:

    相変わらず分かり易く纏めて貰って、
    もー、有り難くって感涙に咽んでおります。
    これならどっこも行かなくても『chibirashka journal』だけ
    読んでればいいや、みたいな感じで。

  2. kmr より:

    はじめまして。

    昨日のおさらい中に、すごく速報かつ詳報をみつけておどろきました。
    英語が苦手なので聞きもらしがこちらで拾えたりもして助かりました。
    IAやUIに興味があるので、またときどきおじゃまします。

  3. chibirashka より:

    >tsukamotchさん
    いつもコメントありがとうございます。そしてお世辞までww
    もっと、概念的にまとめる能力があれば・・・と思いますが、今のところはそんな能力がないので、時系列でただガーガー書いてるだけですorz

    >kmrさん
    初めまして。コメントありがとうございます。嬉しかったです。昨日いらしてたんですね?ご挨拶できれば良かったですね。私の英語も微妙なので、違っていたらごめんなさいね。IAやUIについては、私が所属しているConcent, Inc. でも色々取り組んでいて、このブログでもそれを紹介したりしますので、ぜひまたいらしてくださいね。

Leave a Reply

CAPTCHA