「アスレジャー」にみるライフスタイルのファッション化

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近年のファッショントレンドのなかには「スポーティ」「スポーツミックス」というキーワードがあります。

「究極の普通」を追求した「ノームコア」というトレンドも去年、一昨年あたりはかなり盛り上がって、そのなかにはモノトーンのパーカーやスウェット、Tシャツ、スニーカーなど、気楽でアスレチックなアイテムが多数見られましたね。

そして今年は「アスレジャー(Athleisure)」というトレンドワードが見られるようになってきました。

今日はそんな「アスレジャー」に注目してみたいと思います。

「アスレジャー」とは「アスレチック(Athletic:運動)」+「レジャー(Leisure:余暇)」の造語です。ざっくりいえば、普段着として着つつも休憩中などには運動もできちゃうようなジャンルの服ということで、すでにWikipediaにもページがあります。

ここでも、ジムでの運動だけではなく、ジムの外でも、なんならオフィスやショッピング、その他でも着られるというようなことが書いてあります。

周りを見てもほんとスニーカー祭り。すれ違う人すれ違う人、みなNew BalanceかAdidasのスタンスミスなんじゃないかと思うほどです。

オフィス環境で考えてみても、クリエイティブ業界やスタートアップなどは元々服装がカジュアルであるところも多く、トレンドかどうかに関わらずスウェットやTシャツ、短パン、スニーカーで出勤なんてところも少なくないと思いますが、そうでない業界でも、世の中全体の傾向として、ライフスタイルのなかにランやヨガなど運動を取り入れる人や、ヘルシーな食生活を心がける人も増えているからか、特に米国ではカジュアル傾向が強まっているように感じます。

4月6日〜8日まで東京ビッグサイトで開催された「ファッションワールド東京」での、BEAMSの社長室 上席執行役員/クリエイティブディレクター窪浩志氏の基調講演では「衣食住すべてが今はファッション。ライフスタイル提案型のセレクトショップも増加している。」といった話がありました。

私自身、表参道というファッション感度高めなトレンドの中心地に住んでいることもあり、新たにオープンするショップのジャンルや品揃え、アパレルショップのディスプレイ、行き交う人々を見ていても実際そう感じます。青山界隈で人気のカフェやベーカリー、コーヒーショップの多くがよくよく見てみるとアパレル会社の運営だということも偶然ではないでしょう。

ライフスタイルがファッションと切り離されたものではなく、いっそう融合していくとなれば、この「アスレジャー」も単にファッショントレンドということでもなく、コモディティ化していくというか、当たり前のスタイルとして市民権を得ていくと思われます。

しかし、逆に言えば、それはすなわちライフスタイルもそうなって(ヘルシーでアスレチック)いなければフィットしない(ちぐはぐに見えてしまう)ということでもあります。

例えば花柄やフリルの流行とか単なるファッショントレンドであれば取り入れるのは比較的簡単です。でもライフスタイルの体現となってしまうと、今の自分のライフスタイルが時代性にマッチしていることが求められます。

ランやヨガなどを生活に取り入れている人が増えているからこそ、このファッショントレンドがあるとも言えるのですが、そういう生活をしていない人にとってはハードルが高いということでもあるのです。

実際、「アスレジャー」的コーディネートを考えてみると、スポーツタイツ(レギンス)、スウェットやジョガーパンツ、スニーカーやリュックなどなど、一見すると「ラクちんそうでいいじゃーん!」と思えるアイテムたちが目立ちますが、カラダのラインを拾いやすい素材感やアイテムが多く、これらがファッションのトレンドスタイルとしてカッコよく見えるよう成立させるためには、きちんとカラダがメンテナンスされ鍛えられていることが絶対条件といえるのです。さもないと、トレンドだからとアイテムだけを取り入れても、ただのズボラな格好になってしまい、印象としても「今っぽい」「素敵!」には仕上がらないでしょう。

例外は、鍛えていなくとも、モデル並に等身バランスがとれてスタイルが良いことです。

ところで、パーソナルスタイリングは、それぞれの人がもつ個性や長所を引き立てて、一層魅力的に見える装いを実現していくものです。

そのなかには、内面的な性格や価値観が反映されることや、今やっている仕事や置かれている立場などが適切に伝わるようにすること、また外見的にも身体的特徴のなかで長所だと思うところをより引き立て、短所はカバーするというようなことが含まれます。

私自身は150cmと日本人のなかでも小柄で、また、残念ながらバストやヒップなどもグラマラスではなくメリハリがある体つきではないため、洋服を着るにはあまり恵まれた体型とは言えません。

それでも、背の低さをカバーするようなバランスメイクを心がけている時はたいてい実際の身長より高く見られます。例えばたとえばハットを被ったり高めのヒールを履いてカサ増しするとか、トップスをコンパクトにして重心をあげるとか、アクセサリーなどで視線が上に集まるようにするなどなどですね。

逆にバランスメイク以外を優先したスタイリングの時に「こんなに背が低いと思わなかった!」と驚かれることも多かったりします。

また、全体的には細身な方ですが、上半身の細身具合や身長に比べると腰回りや腿が張り出していたり、引き締まった肉感でもないという、自分にとっては短所と思うところもあります。スキニーなど履くとさらに強調されるので、細い部分だけが見えるようにトップスをチュニック丈にするとか、あるいはそもそもワイドパンツなどで足のラインが見えないものを選んでカバーすることもあります。

というわけで、装いで体型のバランスを整えて見せることは一定の効果があるのですが、それはあくまで「めくらまし」でしかありません。

装いでなんとかすることもできますが限度があります。
そこで今年は肉体改造でもしてみようかと思い、1月後半からジムに通い始めました。

私はこれまで、どちらかといえば運動嫌いで学生時代を含めてもスポーツとはほぼ無縁。

運動らしい運動で強いていえば一時期通っていて、今はごくたまに乗りに行く乗馬ぐらい。唯一興味が持てる運動が乗馬だったわけですがその理由としては、大好きな動物と触れ合えるからということと、「ジョッパーズ(パンツ)」「ジョッキーブーツ」「サイドベンツ」「ハッキングポケット」など乗馬由来アイテムやディテールがファッションに多く見られること、そしてその手の乗馬ファッションがなぜか昔から好きだったからということだけです。

これまでもジムやヨガに通ったことがないわけではないのですが、それほど熱心に通ったわけでも、続いた記憶もありません。むしろ「月会費を払って満足…」だったことも。

でも、今回はけっこう真面目に通っています。
頻度でいえば、週に最低でも2回、平均では3回、多い時は4回、先週は月曜〜金曜まで5日間毎日!!

冒頭でアスレジャーの話をしておきながらアレですが、通い始めた理由は、特にいまフィットネスが流行っているからとか、アスレジャーにトライしたいからということでもなく、またダイエットしたかったからでもありません。

友達にジムに誘われたということと、別の友達がそのジムに関わっていたという、どちらかといえば社交上の理由です。

他にも無理やり理由を挙げるならば、乗馬するにしても基礎体力もうちょっとあったほうがいいかも!?と思ったことと、洋服をきれいに着たいということでしょうか。通うことにしたからには、まぁ肉体改造できたら面白いな…という具合で、後付けです。

そんな全く気合の入っていない理由から始めたにも関わらず、今のところ飽きることもなく、苦痛でもなく、徐々にカラダを動かすことが習慣化してきました。

続いている理由の一つは時々パーソナルトレーナーをつけて、カラダのコンディションをみてもらいながら、無理なく自分にとって必要な種目を適切な量で指導してもらっていることが挙げられます(多分)。

たかだか3ヶ月弱しか通っていない初心者(しかもアラフォー)でも、それなりに感じられるメリットがいくつかあります。
たとえば

  • 姿勢が少しずつよくなっている
  • 肉が少しだけ引き締まってきた
  • 食事が自然と健康志向に
  • なんとなく気分がポジティブ
  • 疲れにくくなった

といったこと。

さすがにジムで肉体改造といっても背は高くなりません。でも、姿勢がよければ多少はスタイルがよく見えるはずです。

ジムでは筋トレ中心にやっていますが、ごく僅かながら筋肉量が増えてるからか体重自体は右肩上がり。でも体重が増えたからといってこれまで着ていた服がきつく感じるということはありません。ジム通い以前なら、「この体重になっちゃうと着るのがしんどい」という服でも、不思議とこれまで通り入ります。そして、実際それらを履いていても、今までは細い筒に無理やり肉を押し込んでいたような感覚だったのに、今は肉にファブリックを纏わせているというか、筒のなかで肉が自立しているような感覚があり、見た目で痩せたという実感は全くないものの、肉質は変わってきたのかもしれないと感じます。

また、特に食事制限などはしていませんが、運動のあとはなぜか、コッテリしたものやガッツリ系よりも、もっとシンプルでヘルシーなものが食べたくなり、頑張らずとも比較的健康的な食事を取る機会が増えました。

さらに、気分がポジティブで疲れにくくなると、外出して歩きまわったり人に会うことが億劫ではなくなります。そうすると、色んな新たな出会いがあったり、面白い話や物事に出くわしたりして、より「楽しい!」と感じることが増えたように思います。

だいたいいつも筋肉痛ということを除けば、いいことづくめ!
いいサイクルができるとそれがそのままライフスタイルになっていくのかも!?

特に私の性分的に、表面的にだけやるのってちょっと罪悪感を感じてしまうということもあるし、貧乏性というのもあるかもしれません。どうせやるならちゃんとやらないともったいないとか。

乗馬スタイルが好きだからといっても単にそういうテイストの服を着るだけではダメで、実際に乗馬をやってみて、なぜ乗馬ではそのディテールの服でないとダメなのかということを体感できないと納得感が得られないというか。そうでないと、実際、ファッションに乗馬スタイルを取り入れるときに、どの部分は外してはダメかという勘所がないままにやることになってしまいます。

何年か前にヨガウェアのlululemonが流行った時も(日本だと今が流行?)、実際lululemon着てヨガやってみたら分かることがあったりとか…。

なんにせよ腹落ち感がないと「いいね!」とは思えないのです。

ちなみにヨガ自体はあまり自分に合うと思わなかったせいか「いいね!」と声を大にして言えないんだけど、lululemonに関しては動きやすいのはもちろんスタイルもよく見えるので、ヨガ好きではないものの「いいね!」と思って超活用してます。

「アスレジャー」の流行にも見られる、ライフスタイルのファッション化(あるいはファッションのライフスタイル化?)はすなわち、パーソナルな部分(普段自分がやっていること、性格、置かれている立場、そして生き方!)のファッションにおける表現でもあり、それはすなわちパーソナルスタイリングに通じることでもあります。

表面的に一時的に流行りだから取り入れるのか、あるいは自分の生活の一部として取り入れるのか。

自分らしさや自分のスタイルって、そういうところから生まれてくるものなのではないでしょうか。

そして、自分らしいスタイルを表現できるかどうかや、世の中で流行っているとしても自分のライフスタイルとマッチしていない場合には選択しないといった判断ができることもまた、現代においては大切なスキルになっていくのかもしれません。

元々の私の性格や好きなもの似合うものなどを考慮すると、アスレジャーに代表されるようなアイテムというのは、私のトップリストには入りにくいけれど、これだけリアルにジム通ったり、一日平均8〜12kmぐらい歩くような生活をしてると、少しは似合うようになってきてもいるのかしら…と思う今日この頃。

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