大人の旅服の考え方〜トラベルカプセルワードローブ〜

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以前、パーソナルスタイリストブログの方で、ワードローブは育てるもの、という話を書いたことがあり、そこでは、自分らしいワードローブを作るためには、「自分が好きなものってなんだろう?」と考えてみるのが有効、ということを書きました。

Jetset Closet Blog |自分らしいワードローブを育てる

しかし、ワードローブは自分らしくありつつも、やはり機能的でなければいけません。

この機能的なワードローブを育てるうえで、私はここ近年、旅行のパッキングが、その訓練、いや、そもそもワードローブ構築そのものに、とても役立っていると感じています。

私は年間10回程度(またはもっと)パッキングの機会があり、パッキングをする度に「カプセルワードローブ」を構築しているとも言えます。

今日はそんなことについて書いてみたいと思います。



カプセルワードローブという言葉、聞いたことがありますかね?
「カプセルワードローブ」は、「Wardrobe」というロンドンのブティックのオーナーであるスージー・フォックスが1970年代に作った言葉で、スカートやパンツ、コートなどのように流行り廃りのない欠かせないアイテムで構成されるワードローブのことです。作ることができるアウトフィット(コーディネート)の数を最大限にできるよう、どの組み合わせでも機能するような服で構成され、過剰に服をもたなくてもどんな状況にでも対応できるということがその主な目的でありメリットであると考えられます。

ちなみに、アメリカのファッションデザイナー、ダナ・キャランが1985年に発表した7つのピースから構成されるカプセルコレクションが特にきっかけとなって、この「カプセルワードローブ」という言葉や考え方は欧米ではかなり浸透していて、カプセルワードローブに関する書籍や記事もたくさん出ています。

日本でも断捨離が数年前から流行ったりもしていますし、毎朝の着替えに迷うこともなく、クローゼットが服で溢れかえることもない、ミニマルな整然としたワードローブは多くの人にとって確かにとても魅力的に映ると思います。

しかし実際にカプセルワードローブを構築するのはとても大変な作業です。
「まず、クローゼットのなかにあるものをいったん全部外に出してみましょう」と言われてしまうと、躊躇してしまう人も多いのではないでしょうか。そもそも、それができるならたいていの問題は解決していると言っても過言ではないかも!?その高い壁を乗り越える、あるいはぶち壊すことなく、なんとかワードローブを洗練させていく方法はないでしょうか?

そこで、旅行のパッキングです!
旅行のパッキングとは、すなわち「持ち出し用ワードローブ」をつくることです。
クローゼットの中身を全部は出してしまわないけれど、ある一定量を取り出し、そのなかでアウトフィット数を最大化し、できるだけ多くの状況に対応でき、とにかくきちんと機能する「カプセルワードローブ」を作ること、として捉えます。

旅行は、行く先々でその土地の美味しいものを頂いたり、地形や気候の影響も受けながら形成される街のキャラクターを感じ取ったり、その街に行かないと見ることができない美術品を見たり…と、服を着ること自体が決して目的にはならないはずですが、とはいえ適切な服選びなくしては快適で豊かな経験はできないものです。

それでも10代や20代前半の若いうちは、周りも大目に見てくれるし、快適かどうかなんてことよりも、より多くのことを経験できることの方が重要で旅自体が大冒険。正直、何を持っていっても、何を着ていても、エネルギーのみなぎった体自体がどんな服よりも魅力的に見えるし、それはそれでいいのです。

しかしある程度年齢を重ねたら、やはり判断力のある大人として、状況に合わせた、街の空気を壊さない、快適でありつつ無難ではない、そんな服選びができると素敵です。

若い時よりは一度の旅行にかける金額もあがり、滞在するホテルや旅行プランのランクが上がっていくこともあるでしょう。かけたコストに対して見合う体験ができるかどうか、行く先々で適切に扱ってもらえるかどうか。なんてことないように感じるかもしれませんが、旅先での装いはそんなところにも影響します。動きやすくて快適ということだけで旅服選びをしてしまうのはもったいないことです。

実際、自分を振り返ってみても、ここ数年特に旅行回数が増えたということと、泊まるホテルが宮殿ホテルだったり、ラグジュアリーホテルだったり、そこでの扱われ方などを肌身で感じたうえで、旅服の重要性に改めて気づくわけです。プラス、年齢。自分勝手に好きな服着ていればいいという年齢はとっくに過ぎたのだなぁ〜などと思うわけです。

そんな経験から、大人の旅行におけるパッキングで考えなくてはならないことには次のようなことが挙げられると感じています。

大人の旅服パッキングで考えるべきこと

  • 旅行日数に十分に足りるだけの数があるか
  • その土地の気候、天気に対応できる服かどうか
  • 旅先でのアクティビティに適切か
  • 旅行地の文化や雰囲気にあっているか(現地の雰囲気を壊さないか)
  • 一緒に行くメンバーとの整合やポジショニングはどうか
  • 泊まるホテルや訪問する場所のクラス感への配慮はできているか
  • こうありたいという姿になれそうか(どんな風に写真におさまりたいか、旅先でどういう人として扱われたいか)
  • 体型
  • 自分のキャラクターと価値観
  • 洗濯環境

一見、単純なチェック項目に見えますが、実際には、旅行期間や旅行地のジャンル(都市かビーチリゾートかといったような)などによって、項目の掛けあわせになっていきます。

ところで、リストのなかに、体型とキャラクターや価値観を入れたのにはわけがあります。

体型については長所を引き立て短所をカバーするというパーソナルスタイリングのこととは別に、調達容易性の観点があります。特に海外旅行の場合には、私のように小柄(150cm)だと自分のサイズで見つけることが難しいという問題があります。それでもアウターやトップスなどは多少大きくてもなんとかなるものですが、体のラインにそったドレスやパンツなどのボトムスに関してはそうもいきません。ですから、現地で短時間で調達するのが難しい可能性が高いものは多めにもっていくという判断につながることもあります。逆に欧米人に近い体型の方が欧米に旅行するようなケースでは、日本でのショッピングを控え、現地で自分の体型にあう豊富なアイテムから必要なものを現地調達することを考えた方がいい場合もあります。

次にキャラクターや価値観について。一般的に旅行のパッキングに関する記事は「いかに軽量にパッキングするか」「いかに無駄をなくすか」を重視するものが多く見られます。そうしたニーズや価値観をもった人は多いのでしょう。しかし私の場合はそこをあまり重視していません(旅行の種類にもよります)。それよりも、私の場合は「現地の雰囲気に合わせてコーディネートを楽しみたい」「オプションは常にたくさんもっていたい」ということの優先度が高いため、自分の価値観に照らすとコンパクトなワードローブが絶対だとも思っていないのです。だからといって、無尽蔵に何もかもを持っていくこともできません。ですから「カプセルワードローブ」のエッセンスを取り入れることにしています。旅行に行くのは自分です。周辺の情報に惑わされずに自分はどんな価値観や指針をもっているかを考えてみましょう。

そして洗濯環境。着た服はすべて汚れ物として持ち帰る人もいれば、その日に着た服はその日のうちに洗ってしまうタイプの人もいると思います。また地域や宿泊施設の湿度によって洗い物が2〜3時間で乾くところもあれば丸一日干しても乾かないということもあります。それによって必要枚数、素材選び、洗濯関連用品の要不要に影響もあるでしょう。

お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、パッキングで考えなければいけないチェック項目として取り上げたこれらは、実は日常生活を完全に凝縮しているともいえます。ですから、1週間分程度の服のパッキングでも、これらのことを念頭に置いて選んだ服は、日常的に活躍させることができる可能性が高いのです。

ラクちんだからという理由だけでどこに旅行に行くときにも、自分に似合っているわけでも、アイテムとして美しいというわけでもないのに、ひらひらのフラワープリントのチュニックにレギンスや中途半端な丈のカプリパンツ、あるいは今なお10代の時のように、Tシャツにデニムにパーカーにスニーカーというスタイルになってしまっていませんか?

旅行中のアクティビティによってはそれが最善のコーディネートになる場合もあるので、決してダメではないですが、「なんか違うんだよなぁ〜」と思いながらも、若い時からのそのコーディネート、旅服選びから脱出できない方は、次回の旅行の時はぜひ、上記のリストを念頭において服選びしてみてくださいね。

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